報道ワイド番組の人気コーナー「明日なき暴走」。下請製作会社のディレクター長谷見が紹介するのは、若者たちが繰り返す無軌道、無分別な行動の数々。だが、これは長谷見が知り合いの若者に頼んでやらせたものだった。ある日、その若者が襲われ、それを長谷見の仕業だと誤解した若者は・・・。
もうね、登場する人物がイヤな人たち満載で、読みながらどんどん気持ちがザラザラと荒んでいきました。でも、続きが気になって読むのは止められないというジレンマ。やらせに突っ走る長谷見の言動が、どんどんエスカレートしていって引き返せなくなっていく。まさに「深みに嵌る」と言う感じで、ずぶずぶと沼に飲む込まれていくようで、うわぁ、いやだ、いやだ!もう読みたくなーいっ!と思いながらも、本を閉じることはできない・・・。
怖かった。ゾッとした。現実にも「やらせ報道」っていうのはあって、問題になったりもしますが、こういうことなんだろうなぁと、すっごいリアリティがありました。本人が気付かないうちに、許容のラインがどんどん上がっていくんでしょうね。受け取るほうとしては、報道に携わる人たちの、その一線を越えてはいけない、というモラルや矜持を信じるしかない訳で。その信頼を裏切らないようにして欲しい、と改めて切に願いました。
どんな結末を迎えるのかと思っていたら、まさかの大どんでん返しが待っていて、もうね、うわぁぁぁと叫ぶしかなかったです。まったくスッキリしないし、嫌な気持ちだけが残りました。
これぞ、イヤミス。グッタリ疲れたけれど、読んだなぁという充実感も半端ない。
(2017.10 読了)
2018年01月19日
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『ディレクターズ・カット』/歌野晶午 ◎
Excerpt: う~わ~。後味悪~い。 さすが歌野晶午さんだよなぁ(^^;)。 まさに、『ディレクターズ・カット』。 肥大化する自己顕示欲(承認欲求)、捩くれ暴走する「脚色された事実」、救いのないラスト。 しかも、実..
Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。
Tracked: 2019-05-14 20:54
何ともリアルで、イヤな作品でしたねぇ~。
ネタ晴らしからのどんでん返し、最終章「※これは演出の範疇です」の〈ディレクターズ・カット〉部分、最後の長谷見の述懐。
私も同じく、どっと疲れました・・・。
とうとうウェブリグログも、6/4のリニューアルをもってトラックバック機能を止めることになりましたね・・・。
ブログ自体が〈オワコン〉扱いなのかしら・・・。
切ないなあ・・・。
すっかりご無沙汰しているにも関わらず、コメント・TBありがとうございます!
本当にイヤぁなお話でしたね・・・。1年以上前に読んでいるのに、今でもあの時の後味の悪さが蘇ってきます。そして、でも、こういうことって現実にもあるよなぁと思うとゾッとします。
水無月・Rさんのコメントでトラバ機能停止を知りました!なかなか更新出来ていない私がいうのも何なんですけど、止めてほしくなったなぁと思っちゃいます。
そろそろ本格復帰を!と目指していたので切なさが募ります。。。