2017年07月15日

やめるときも、すこやかなるときも(窪美澄)

タイトルと桜の花が綺麗な装丁。窪作品だけど、今回は趣がちょっと違うのかな?と思いながら読み初めましたが、やはり窪さんでした。胸をぎゅぅぅぅーーーっと搾られる切ないお話でした。

家具職人の壱晴と制作会社勤務の桜子。壱晴は過去のトラウマを抱え、毎年12月の数日間は声が出なくなる。桜子は困窮する実家を経済的に支えていて恋愛に縁遠い。そんな二人が友人の結婚式で出会い・・・。


壱晴の過去の出来事が衝撃的でした。声が出なくなるんだから、それはかなりの出来事だったんだろうとは思ってたんだけど、まさか目の前で・・・というのはね。それも高校生だったんですよね。予想以上に重くて切ない過去でした。家庭環境とかでも、桜子と重なる部分があったりもして、二人で歩んでいって欲しいという気持ちはあっても、そう簡単に「二人で乗り越えて欲しい」とは言えなくなってしまった。そんな訳で、もしやこれは悲しい結末なのかなとドキドキしながら読み進めました。

そういう二人の関係とは別に、家具を作る壱晴の静かな佇まいというかのかな、そんなものがページの奥からふんわりと立ち上がってきて、そういう部分も好きでした。手作り家具って、お値段的にも雰囲気的にも、一般庶民の私には手の出せない印象があって、なんか憧れます。作品に登場した椅子とかね、欲しいなぁとチラッと思うものの、それを私の部屋に置く、と考えると、いや待てよ、となってしまいます。合わない。てか、私の部屋、和室だし(笑)

壱晴と師匠の関係も良いなぁと思いました。まさか、あんな展開が待ってるとは思いもしなかったけど。

どうなるのかとドキドキしていた二人の関係でしたが、ほんのりと心が温かくなるラストに、あ~良かったなぁと泣き笑い。読了して、表紙の桜とタイトルがしみじみと胸に沁みてきました。


そうそう。この作品を読んだら、なんだかね、無性に「晴天の迷いクジラ」を再読したくなったんですよね。なんてトラップなんでしょう・・・。



(2017.06 読了)








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ラベル:読書 著者(か)
posted by すずな at 11:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私もこれはハッピーエンドではないんじゃないかと思ってました。
途中まさにそんな感じだったし。
でもほんっと心が温かくなるラストでよかったです。

そんでもって私も家具職人が作る椅子がめちゃめちゃ気になって、ネットで調べたりしましたよ。
速攻「高っっ。無理っっ。」ってなったけど(笑)
きっと壱晴さんならすずさんの和室のお部屋にも合う椅子を作ってくれると思いますよ~
Posted by あいぴょん at 2017年07月18日 14:22
>あいぴょんさん
ですよねー!ラストにはホッとしましたけど、それまでドキドキしましたよねぇ。
これを読むと、手作り家具が欲しくなりますよね!で、検索してお値段見て現実に引き戻されるという(笑)
和室に似合う椅子ってどんな感じなんでしょう。壱晴さんなら作れそうな気がしますね~。でも、どうかお求めやすい価格でお願いしたい(笑)
Posted by すずな at 2017年07月19日 05:40
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