2016年11月09日

海の見える理髪店(荻原浩)

第155回直木賞受賞作。短編集。

読みたいなぁと思いながら、なかなか手が出ずにいるうちに直木賞を獲ってしまった。そうなると、もうね、別に良いや。という天邪鬼が働いたんですが、そこを見透かすように職場の同僚がぐいぐいと押し付けてきました(笑)
借りたからには読まねば、ということで、手にした本でした。

長編だと思ってたら短編集で、連作短編集かと思ったら、それぞれ独立したお話だったということで、何だか2段落ちみたいだなぁと思いながら読了。タイトルから”海の見える理髪店”を舞台に、そこに訪れる客と店主の交流を描いたものかと思ったんですけどね。2編目を読んだ時に、あれ?もしかして全く違うお話なの!?という驚きと、ちょっぴり残念だなぁという気持ちを味わいました。とはいえ、それぞれが、切なかったり、苦しかったり、ちょっとホロリとしたりと楽しめる家族小説でした。


・海の見える理髪店
タイトル作。伝説の床屋とある事情から最初で最後の予約を入れた僕との特別な時間。
床屋が髪を切りながら話す彼のこれまでの人生。なかなか波乱万丈の人生を送ってきたんだなぁと床屋の話を読みつつ、これがどういうオチになるのかと思っていたら・・・。これは気付けよー!と思わず自分に突っ込みを入れてしまった;;;なんで気付けなかったのか、自分でも分からないけど、お陰で「うわっ!」と驚かされたので良し、という感じでしょうか。・・・負け惜しみのようですが;;;その後、ちょっとしんみりとしてしまたのでした。

・いつか来た道
画家の母から逃れて16年。弟に言われて母の住む家を訪れた私は・・・。
母と娘って多かれ少なかれ、こういう複雑な感情ってあるんだろうなぁと思いつつ読みました。私にも確実にある。奥底に隠しているドロドロとしたものもあるけど、母の”老い”を目の当たりにすると、それが薄れる瞬間があるのも事実で。この”私”の感情の移ろいが理解できるというか、共感できるというか・・・。

・遠くから来た手紙
仕事ばかりの夫と何かと干渉してくる義母に反発して子どもを連れて実家に帰った祥子。その夜から不思議なメールが届き始める。
これはね、展開も真相も、そうだろう、そうくるよね、という感じでして。意外性はなかったかなー。

・空は今日もスカイ
親の離婚で母親の実家で暮らすことになった茜。ある日、家出をして海を目指して歩き出したが・・・。
茜の出会った男の子が・・・。最後、警察に保護された時には、茜たちと一緒に「違うよ、違うって!!」と思わず本当に叫びだしそうになりました。どうか、警察が真実に気付いて対処してくれてますように。祈らずにはいられないお話でした。

・時のない時計
父の形見の時計を修理する為に訪れた時計屋で・・・。
記念の時間で時計を止めているという時計屋さんには、さすが職業柄すごいことを考えるなぁと思ってたんだけど。だんだんと雲行きが怪しくなっていって、最後はゾッとしました。怖かったなぁ・・・。

・成人式
中学生の娘を亡くした夫婦。ある日、死んだ娘宛に成人式の着物のカタログが届き・・・。
もうね、これはね、切ないお話でした。「なぜ、あの時・・・」という後悔は何年経っても消えないだろうし、ましてや、それが娘の死に関することなら余計に、ね。でも、夫婦2人で、何とかそれを乗り越えようとする姿に、色んな感情が胸に迫ってくるお話でした。この2人が少しでも穏かな日々を送ることができますようにと祈らずにはいられない。



(2016.11 読了)







海の見える理髪店
集英社
荻原 浩

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ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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