2016年09月10日

アンマーとぼくら(有川浩)

かりゆし58の「アンマー」という曲に着想を得て書かれた物語。

かりゆし58の「アンマー」ですか・・・。うーん、聴いたことないなぁ。てか、かりゆし58の曲自体をほとんど知らないよ。ということで、聴いてから読んだ方がいいのかなとネット通販でポチッてアルバム入手。結果、「アンマー」を聴いて泣いてしまった。
ということで、これはまた「泣け泣け!」なお話なのかなぁと覚悟して読み始めました。


休暇で沖縄に帰ってきたリョウが継母である「おかあさん」と旅する3日間。沖縄でガイドをしている「おかあさん」と旅をしながら不思議な体験をするリョウ。過去と現在を行き来しつつ過ごした3日目に辿り付いたのは・・・。



*****

ちょっとネタバレ気味です。
念の為、予防線をば。

*****


















・・・そうだった。有川さんってデビュー作が「塩の街」だったんだよ。突然、塩が降ってきて人が死んじゃうっていうお話だったよ。と、そんなことを思い出したり。コロボックルはファンタジーですが、その前は劇団や児童養護施設などを舞台にした小説が続いていたので、自然とそういう意識が薄れてたんでしょうね。冒頭部分を読みながら「あ、そういうことかな・・・」と予想がついちゃった部分があって、それと同時に「そうだったよ、デビュー作は塩が降ってきたんだったよ~!」と、そんなことを思ったのでした。

そして、冒頭で予想がついちゃった部分は、「やっぱりそういうことだよね」と確認しながら読んだような、そんな感じの読書になったんですよね。最後も「やはり、そうきたか」という展開でして、そういう意味ではちょっと意外性はなかったかな。

「泣くぞ」と、覚悟して読み始めたものの、だからなのか、実は”号泣”という程ではなかった。もちろん、涙腺が緩んで、うるっときたり、ぽろっとしたりはあったけど、タオル握り締めて・・・ということはなかったかな。有川作品にしては、そこまで心を揺さぶられることなく読了しました。だからといって面白くなかったということではないんですよ。タイトル通り、親子愛がじわ~んと沁みる、母親の愛に包まれているような物語でした。そして、装丁通り、沖縄の海に守られているような物語でもありました。

・・・と、読了してすぐは、そのくらいの感想だったんですよね。


母親の愛情がメインではありましたが、父親の写真でリョウが号泣するシーンがあって、まぁ、もちろん泣かされたんだけど、でも、ちょっと面食らったりもしたんですよね。え、そっち?母の愛だけじゃなくて、父の愛もなの!?みたいな・・・。どうして、このシーンがこの物語で語られるのか、イマイチしっくりこなくて。なので、涙腺を緩ませながらも、思わず、冷静に突っ込みをいれたりもしたのでした。

おかあさんと旅を続けるリョウが過去に思いを馳せ、物語は現在と過去を行きつ戻りつしながら進んでいく。いくら過去を変えたくても変えられるものではない。「どうしてあの時」「何故あんなことを」悔やんでも悔やみきれない過去を人は誰でも、一つや二つは持ってるのではないかなと思います。私も然り。リョウの過去を読みながら、自分の過去のアレコレが浮かんでは消え、消えては浮かび、様々な思いが去来しました。でも、過去は変えられない。

それなのに、沖縄が奇跡を起こす。
でも、おかあさんのことではなく、父親のこと、なんですよね。最初は、それにすごい違和感があって。読み終わって、うーん、良かったんだけど、でも何だかスッキリしないなぁ。かりゆし58の「アンマー」を聴いた時の方がグッときて心を揺さぶられたなぁ。やっぱ、曲を先に聴いたことで先入観を植え付けちゃって拙かったのかなぁ。と、そんな風にあれこれ思い返しつつ「アンマー」を聴いていたらフト思ったんですよ。結局のところ、奇跡を起こしたのは沖縄ではなく、おかあさんだった、おかあさんの愛だった、ということなのかなと。そう思ったら、すんなりと受け入れられて、そして、ん?まてよ。てことは、父親の写真のエピソードも、おかあさんの愛が、すれ違っていた父親と息子の気持ちを結んだと、そう考えるとすごくしっくりくるなぁと、そこでようやく得心がいったというかね、タイトルと物語が”ピタッとハマった”のでした。
・・・遅いよ、ジブン;;;

ということで、読んでる時はアレコレ雑念が多くてそこまで感情を揺さぶられることはなかったんですが、読了してから、じわじわじわじわと心に沁みてきて、うわぁ~おかあさーん!と涙腺決壊で・・・。

もうね、ホント遅いよ、ジブン。。。
反省しつつ、沖縄の碧く染まる海に包まれた本を撫で回したのでした。



そうそう。
この作品は、主人公がおかあさんと二人で沖縄の観光地を回るというお話なので、「県庁おもてなし課」の沖縄版みたいな印象も受けました。沖縄には一度は行ってみたいと思いながら、なかなかチャンスがない。なので、「沖縄行きたーい!行きたいよー!」と心の中で叫びながら読みましたよ。これ、そういう意味では大変、キケンなお話でした。すっごく行きたい。でも、今後の数年間のことを考えると、ちょっとまだ行けないなぁと思う。行きたい気持ちをグッと堪えるのは、なかなかタイヘンでございます。。。





(2016.07.23 読了)





アンマーとぼくら
講談社
有川 浩

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posted by すずな at 12:00| Comment(6) | TrackBack(3) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
昔、泣ける歌みたいな番組がありまして、その時にこの歌が紹介されていました。それが影響して一時期テレビでお見かけしたりしてました。
ボーカルの前川さんが若い頃に結構なワルで^^;お母さんにとても迷惑を書けたということで生まれた歌なんですよね(ざっくりな説明)歌はとても素敵ないい曲ですよね。
展開はなんとなく読める感じではありましたが、おかあさんとの沖縄2人旅は読んでいて楽しかったです。沖縄を旅行しているようで私も行きたくなりました。そして同じくしばらくは我慢ですが^^;
Posted by 苗坊 at 2016年09月10日 12:41
>苗坊さん
そうだったんですね~。本当に素敵な良い曲ですよね。しばらくは聴く度に泣いていました^_^;

展開が読めたときには、あ~;;;って感じだったんですけど、沖縄2人旅は楽しく読めましたね。
そして、やっぱり沖縄に行きたくなりますよね!!私は同じ九州なんですけど、海を越えるときは北にばっかり行ってしまって、なかなか行けずにいます。苗坊さんも、しばらくは我慢ですか。2人で頑張って耐えましょうね^_^;
Posted by すずな at 2016年09月10日 15:26
曲を聴かないまま、まっさらな気持ちで読みました。結果、号泣でした(笑)

「ぼくら」なんですよね。「ぼく」じゃない。
途中で忘れていたタイトルを確かめたくなりましたもの。
これをリョウの心の整理の過程と思うと面白くない。
やっぱり、アンマーが最後に自分の心残りを解消していった、アンマーのための奇跡の時間のように私も思ったよー。
沖縄に行きたくなるねぇ。
Posted by 香桑 at 2016年09月13日 12:54
>香桑ちゃん
実は、読了後に、曲を聴く前に読んだ方が良かったかもと、そんなことをチラッと思ったのでした。なので、ちょびっと羨ましいなぁ。

そうなの!「ぼく」じゃなくて「ぼくら」なんだよね。このタイトルをしっかり頭に残しておけば、微妙な読後感を感じずに済んだのかもしれないなぁと反省しきりでした。
ホント、沖縄に行きたい!
Posted by すずな at 2016年09月14日 12:38
すずなさん、おはようございます(^^)。
私は終盤ずっと泣いてしまいました…。
おかあさんの大きな愛に、おかあさんとぼくから広がっていく色々な愛に、泣かずにはいられませんでした。

私、お父さんが好きになれなかったので、ずっと引っかかってたんですが、ぼんやり「おかあさんの愛が、微妙に隔たっていた父と息子の間の愛情をを再現させたのかな~」と思うことで自分を納得させてたんですね。それをすずなさんがはっきり書いてくださったので、ああやっぱり!とすっきりしました。

沖縄行きたい!と私も思いました~(^^;)。
Posted by 水無月・R at 2017年01月16日 09:39
>水無月・Rさん
今回、珍しく(笑)涙腺大決壊!とならなかったんですよねぇ・・・。お父さんに惑わされてしまった^_^;

私もお父さんが好きになれなくて。なので、お父さんエピソードで戸惑ったりもしたんですが、読了後に”母の愛”か!と気付いたんですよね。読んでる時に気付いてれば・・・と思いましたけど^_^;
でも、お互いスッキリして良かったですよね、ってことで(笑)

沖縄、行きたくなりますよねぇ・・・。
Posted by すずな at 2017年01月17日 12:35
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Tracked: 2017-01-16 09:32