2016年02月11日

私は存在が空気(中田永一)

短編集。

”すこし不思議”なラブストーリー6編。ということで、超能力者の恋物語なんだけど、これって、中田さん名義でいいの?と、思ったお話もありました。中田さんって、心に沁みる”感動ストーリー”というイメージだったんだけど、そうじゃなく、なかなかクロい作品もさりげなく混じっていたような。なんだか、乙一さん名義っていう方がシックリくるようなお話もありました。もちろん、じんわり沁みる素敵なお話もあったんだけど、クロい方が印象に残ってしまったんですよねぇ。実は、読んでる途中で何度か著者名を確認した作品があったというのはここだけの話~(笑)


・少年ジャンパー
妹にまで醜い顔を疎まれる引きこもりの少年が身につけたのは瞬間移動の能力。その能力を知った先輩に頼まれ、遠距離恋愛中の彼の元へ連れて行くことに・・・。
ちょっと切ないお話だったなぁ。好きな先輩のためにグランドキャニオンまで旅をする少年は、素直に凄いなぁと思いました。ラストも素敵でした。

・私は存在が空気
幼い頃の父親からの暴力から逃れる為に、気配を消すことができるようになった少女。他人からは空気のように気にとまらない存在となったことを利用してイケメン先輩の跡をつけ・・・。
能力を身につけた理由が、ねぇ。ホント切ないというか、何というか・・・。その上、母親にまで空気のように扱われるっていうのは堪らなかったですね。そして、先輩の部屋にまで侵入したのにはゾッとしたんだけど、そんな理由だったとは!うわっ、ストーカーじゃん。怖い!気持ち悪い!と、さんざん暴言を吐いて、ホントすみません。。。って感じでした。良かったなぁと思いきやラストは、なんだかまた切なくって・・・。やっと認識してくれた人だもんね。気持ちがすごく分かるだけに、ね。出来れば、ほっこり終わりたかったなぁという気持ちも無きにしも非ず。

・恋する交差点
ちゃんと手を繋いでるはずのカップルが交差点の人ごみを歩くといつの間にか別な人の手を握っていて・・・。ショートショート。これは、ちょっと可愛いお話でした。どうか幸せになって欲しいなぁと思ったのでした。


・スモールライト・アドベンチャー
スモールライトで小さくなってしまった少年が転校生の女の子のスカートの中を覗こうと思い立ったが・・・。
小さくなってやりたいことの一番が女の子のスカート覗きってどうよ?まぁ、小学生だから、微笑ましいっちゃ微笑ましいけど(笑)そんな不純な動機で出掛けたのに、その女の子の危機に遭遇して救い出すために奮闘することになるとは!まさかこんな展開になっていくとは思いもしなかったので、意外性にヤラレちゃった気がします。無事に救出できて良かった。それにしても、どうして宅配なんかでスモールライトなんてシロモノが送られてきたんでしょうか。すごーく気になる謎です。。。


・ファイアスターター湯川さん
幼い頃に両親が失踪し、叔父のアパートの管理人をしつつ大学に通う青年。ある日、アパートの空き部屋に湯川さんという女性が引っ越してきた。彼女には火を発生させることができる能力が備わっていて・・・。
この短編集の中で、唯一、語り手が超能力者ではなく、超能力者と知り合った人という設定。なので、それまでと違った気持ちになれたのかどうなのか、このお話が一番好きだったかな。超能力を持つが故に養父に育てられ、秘密の仕事をさせられていた湯川さん。なんかねぇ、その生い立ちを思うと言葉が出ないんですけど。でも、管理人の青年やアパートの住人たちとの交流は良いなぁと思いました。そうやって、せっかく平和に暮らしていたのに・・・。残念でしたけど、最後は希望(?)が見えるラストで良かった。


・サイキック人生
生まれつき透明な腕を持っていて、それを使って遠くのものを動かしたり出来る、そんな能力を持つ少女。母方の一族が持つ、この能力は他人に知られたら、配偶者にするか自分で殺さなければならないという掟があって・・・。
これはちょっと好きじゃなかったかな。若さゆえなんでしょうけど、やりすぎは良くない。読んでて、最初はヒヤヒヤしたけど、最後には呆れてしまった。・・・と、主人公に共感できないまま読了しちゃった感があります。まぁ、蓮見くんのお母さんのためにしたことは良かったなぁとは思ったけど、なんというか、小骨が刺さった感じが抜けなくって・・・。最後のお話がこれっていうのが、ちょっと残念でした。




(2016.01.30 読了)




私は存在が空気
祥伝社
中田永一

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ラベル:読書 著者(な)
posted by すずな at 14:24| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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