2016年02月28日

とにかくうちに帰ります(津村記久子)

連作短編「職場の作法」4編と短編2編という、ちょっと変わった形式の短編集。あ、短編2編のうちの1編も「職場の作法」と同じ主人公なので、実際は連作5編と単独1編って感じでした。


津村作品は芥川賞受賞作を読んで、微妙な感想だったから距離を取ってたんだけど、ひょんなことからウッカリ手に取ってしまいました。どうかなぁという不安はあったものの、なんというかね、独特のリズムがあって、そこがじわじわと効いてくる感じがして、そんなにのめり込む訳ではないのに、読むのを止められなくて最後まで読んじゃった、そんな感じでした。面白いか、面白くないか、どっちだ?と聞かれたら、面白かった。そう答えるかな。

「職場の作法」の最初の1編「ブラックボックス」がとても印象的でした。頼んだ人の頼み方によって、書類の提出を調整する女性が描かれていて、これがねぇ、もうめっちゃ親近感というかね。ぶっちゃけ、私も真似したくなった(笑)彼女の気持ち、すごくよぉーーく分かる!あ~そんなやり方があったのか!と思いました。今からでも遅くないかなぁ…とか、職場の人たちの顔を思い浮かべながら読んだのでした。

それ以外のお話も、働いている身としては、色々と親近感が湧いたり、なんだりで、なかなか興味深く読めました。

そして、「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」がね。ふと目にしたアルゼンチンのフィギュアスケート選手についての思いが描かれていることもあって、なかなか面白く読めました。フィギュアスケート自体が違った意味でも面白く読めました。ちょっぴりテンションが上がった(笑)

最後の短編は、豪雨の中、なんとか家に帰ろうと頑張る人々のお話。もうね、読みながら、頑張れ、頑張れ、と心の中で声援を送ってましたね。私自身は、田舎町なので車通勤が当たり前で、電車やバスが止まって帰れないって経験がないんだけど。TVのニュースでやってるのを見ると、本当に大変だなぁ、無事に家に辿り着ければいいなぁと思って見てるんですけどね。無事に駅に着いた時には、心からホッとしました。


なんだかクセになりそうな文章で、津村さんの他の作品も読んでみようかなと思ったのでした。



・職場の作法
ブラックボックス
ハラスメント、ネグレクト
ブラックホール
小規模なパンデミック
・バリローチェのファン・カルロス・モリーナ
・とにかくうちに帰ります




(2016.02.23 読了)


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)
新潮社
2015-09-27
津村 記久子

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ラベル:著者(た) 読書
posted by すずな at 17:20| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すずなさん、こんばんは~^^
津村さんの文章、とっても独特ですよね。リズムといい、空気感といい、津村作品に共通する淡々とした感じが、気付けば病みつきになってます。
すっごいよかった!と興奮するというより、疲れた時になんだか手を伸ばしてしまうというような。
それに、仕事をしているとなんだか「わかるわかる」って共感するような部分がありますよね。
私も津村作品少しずつ読み進めているところです。
Posted by yoco at 2016年02月29日 19:59
>yocoさん
分かります、分かります!淡々とした文章なんですけど、なんだかクセになるっていうか・・・。
私もOLをやってるので、「職場の作法」の一連の短編にはすごく共感しながら読みました。
yocoさんより、ゆっくりペースになると思いますが、私も少しずつ読み進めていきたいなぁと思います。
Posted by すずな at 2016年03月01日 12:49
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