2016年01月09日

朝が来る(辻村深月)

不妊治療の末に養子縁組をして子供授かった夫婦と、子供を産んでも自分で育てられず手放さなければならなかった母親の物語。


最初の不妊治療の部分は読んでて、なかなか辛かった。って、結婚もせず、「子供が欲しい」と切実に願ったこともない私が、こういう言葉を綴っていいものかどうか迷いますが。でも、欲しくても自分の力ではどうしようもなく、何をやってもそれが実を結ばない、そんな辛さ、しんどさ、切なさは分かるつもりです。もちろん、想像でしかないですけど・・・。そして、辻村さんの文章から、それらの想いがすごくすごく伝わってきて胸が締め付けられました。

最後に夫婦が決断する養子縁組。夫婦二人の想いが一致しての選択にホッと胸をなでおろしました。どうかこのまま幸せな家庭を築けていけますようにと願いました。

そして、子供を産んでも育てられなかった母親。どうして妊娠したのか、そして、どうして自分で子供を育てられなかったのか。読んでてヒヤヒヤした。二人の無知さ、浅はかさ加減に呆れました。見た目はそれなりに大人でも、子供はやっぱり子供なんだなぁと。でも、そういう知識をキチンと伝えられなかった大人の責任でもあるのかな・・・。とか、中学生になった姪っ子のことが頭に浮かんで、ちょっと心配になったり、教えとくべきか、いやいや、それは親の役目だしとか、あれこれ考えたりもしました。

それにしても、出産後にそんな人生を歩んでいたとは・・・と、読み進めて絶句しました。でも、あそこまで追い詰められていたら、ああいう行動を取ってしまったのも分からないでもないかなとも思いました。妊娠から出産までは、あんなに愛しんでいた我が子なんだけど、それを脅迫のネタに使うほどに追い詰められてしまった母親に、同情というかね、なんとも切ない気持ちになりました。

脅迫された夫婦がどういう行動を取るのかと不安になったんですが、そこはまさかの展開でした。このご夫婦のスタンスにはすごく共感出来たし、素直にすごいなぁと思いました。当事者になったことのない私が言うのもなんなんですけどね;;;


ラストは「ここで終わるのーっ!?」と思ったんですけど。確かにようやく”朝が来る”かな、と思えるラストではありましたが、もうちょっと先まで読みたかったなぁというのが正直なところ。

でも、読めて良かった。結婚する予定も子供を産む予定もない私ですが、色々と考えさせられたお話でもありました。





(2014.09.09 読了)






朝が来る
文藝春秋
辻村 深月

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ラベル:著者(た) 読書
posted by すずな at 11:47| Comment(4) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは^^
この作品は辻村さんが母親になったから書けた作品なんだろうなと思いました。
育て親である二人は素晴らしかったですね。
子どももちゃんと一人の人として見ているのが素晴らしかったです。
生みの親の人生は可哀相すぎますよね。
自業自得と言えばそれまでなんですけど、周りの環境も悪いですよね。もっと手を差しのべてくれる人がいてくれたら…と思います。
最後は私もここで終わり!?と思いました^^;
これからどうなるのか気になりましたよね。
Posted by 苗坊 at 2016年01月09日 20:11
>苗坊さん
私も辻村さんが母親になったからこそ書けたのだろうなぁと思いました。
育ての親のスタンスが凄いなぁと思いましたね。だからこそ、あの脅迫にも臆することなく堂々と対峙出来たのだし。
生みの親のその後は読んでて、どうしてここまで…と思ってしまいました。確かに本人にも問題はあったんでしょうけど、周囲の人たちがもうちょっと何とか出来たんじゃないかなと思ってしまいます。
ラストはちょっと物足りなかったですよねー!もうちょっと先まで読みたかったですね。
Posted by すずな at 2016年01月10日 07:10
自分が母親だからでしょうか、産みの母親の気持ちも育ての母親の気持ちも分かる気もするけど、なんの問題もなく出産子育てしてきた身でそんなことを言うのはおこがましいような。。。

ドラマ「コウノドリ」でも中学生が産んだ子の養子の話があって、それも大号泣で見てたので、うちの娘も中学生になったから、すずなさんが姪っ子ちゃん心配してるみたいに同じこと感じたり。

よく中学生とか高校生とか周りの人も「妊娠してるのきづかなかった」とか聞くけど、なんでって思う。
特に親がきづかないなんておかしいよね。

あれ、話がかわってきたかな󾌱
なんかいろんな目線から考えて読んだ作品でした。
Posted by あいぴょん at 2016年01月11日 19:53
>あいぴょんさん
デリケートな問題なので、当事者じゃないのにこんなこと言っていいかなぁ・・・とか思ってしまうよね^_^;でも、母親として、そう思うのは自然な気持ちなんじゃないかなと思います。
中学生での出産については、身近に中学生くらいの女の子がいる人はみんな同じように感じるのかもしれないですね。そして、子供の妊娠に気付かない親っているのかな?と私も不思議に思います。。。

語り手の立場が変わるお話だったので、色んな目線で考えるお話でしたね。様々なことを考えさせられました。
Posted by すずな at 2016年01月13日 12:34
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