刊行済みの短編集「バスジャック」に収められた「動物園」と、「廃墟建築士」に収められた「図書館」に登場した日野原柚月を主人公にした中編2編。
どちらの短編も印象に残っていた作品だったので、まるまる1冊をこのお話で刊行されたのは嬉しかった。本物そっくりな動物のイメージを「表出」することが出来る能力者たちの物語。
相変わらずの三崎ワールドを堪能しました。どうしたら、こんな世界を創れるのか。何度も書いてますが、一度でいいから三崎さんの頭の中を覗いてみたいものです。時々、理解するのに苦労することもあったけれど、そこはもうお約束って感じでして。「そういうものだ」と素直に受け入れることが肝心なのです(笑)
同じ能力を持つのに、なかなか一つになれないというのは、どこの世界でも一緒なんだなぁと思った。能力の差もあるし、個々人の性格や考え方でも違ってくる。だれもが、「正しい」と信じた道を進んでいるんだろうけど、それが、時として悲しい結果をもたらしてしまう。とっても切ない物語でした。
最初のお話もですが、2編目のお話は早い段階で「たくや君」の正体は分かってしまって・・・。一緒にいる柚月の気持ちはどうなんだろうと思うと、堪らない気持ちになりました。ただ、ラストは希望が見えて、嬉しい方向にいけそうな感じだったので良かったなぁと思いました。どうか、穏やかに・・・とはいかないかもしれないけれど、二人一緒に進んでいけますように。。。
(2015.04.30 読了)
2015年05月06日
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その生き物たちを巡る人間たち
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Weblog: 笑う社会人の生活
Tracked: 2015-06-11 20:06
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Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。
Tracked: 2017-02-16 18:18
〈表出〉という能力の描写がリアルで、本当は存在する能力なんじゃないか?と思えてしまうほどでしたね。
ホント、三崎さんってすごいなぁと思います。相変わらず「世界設定ノートが見たい~!!」と呻きながら読んでました(^^;)。
たくや君と柚月が一緒に仕事をしてるのは、やるせない気持ちがしましたねぇ。
強大な力を持つたくや君を、能力的にも心理的にも一番フォローできるのが柚月だったのでしょうけど・・・。
2人が一緒に新たな旅立ちをするラストが、よかったです。
三崎作品を読む度に「設定ノートが見たい!」と思ってしまいますね。どうしたら、こんな世界を描き出せるのかと感嘆しっぱなしです。
ホントやるせない気持ちになりましたよね。切ないお話でしたが、ラストはちょっとホッとできてよかったですね。