「道尾秀介作家生活10周年記念作品」と銘打たれた作品。そんなこと言われちゃったら、めちゃめちゃ期待しちゃうじゃないですかっ!こんなに期待して読み始めて、まさかの期待ハズレとか、そんなことないよねぇと一抹の不安を感じつつ、でも、そんな期待を裏切らないのが道尾さんよね、うんうん。と余裕で読み始めました。
特殊な声を持つラジオパーソナリティーの恭太郎。でも、その声に反して容姿は冴えず、学生時代はひきこもりも・・・。そんな彼が、行きつけのバーで出会った美女。ひょんなことから、バーの常連客たちと一緒に彼女の企てた殺害計画に参加することになってしまったが・・・。
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ちょっとネタバレ気味かな。
未読の方はご注意を。
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前半は楽しいドタバタ劇って感じでした。思わず笑ってしまったり、突っ込んでみたり。あれ、これってコメディだったのか?道尾さん、新境地!?とか思いつつ読みました。殺人計画だって何だか穴だらけだし、これって父親本人だよね、とか分かってしまったりで、ミステリーとしては弱かったのもあったので、余計にそんな風に感じてしまったんだと思うんですけどね。
ところが、読み進めて中盤を過ぎ終盤になるにつれて、どんどん内容が重くなっていく。”不法投棄”話は恵ちゃんの作り話だろうと軽ぅ~く考えていたら、本当だったのでビックリ。うわ、そうきたかー!でした。コメディーとか言ってごめんなさい!って感じです、はい。
そして、ラスト。まさかまさかの展開でした。そんな展開が待ってるとは思いもしなかったので、気持ちの準備がぁぁ・・・と、なんと言うかね、呆然としてしまったという感じでして。で、そんな感じのまま一気に読了。・・・しちゃったんですよね。
色々と伏線は張ってあったようなので、薄々でも気づけば良かったんだけど、もうね、本当にこの展開は全く予想外だったんです。それが、今までだったら”嬉しい驚き”に変わってたんですけど、今回はそういう喜びよりも何故か戸惑いの方が大きかった。なんでだろう?と考えてみたけど、そこはよく分からなくって。ただ「まさかこんな重い展開が待ってるとは・・・」とか「今はこんな重い展開のお話はちょっと読みたくなかったなぁ。」というのは感じました。なので、読んでる時や読み始める前の心理状態が、読後感にかなり影響しちゃったのかなとは思ったんですけどね。読んだタイミングだったのかな・・・。うーーん。
と、そんなこんなで、なんともスッキリしないというか、ね。微妙にモヤモヤ感が残ったままになっちゃったんですよね。いつもの道尾作品のように「うっわぁーっ!」とテンションが上がりきったことろで読了!ではなく、もうちょっと何かしら・・・と、そんな思いにを感じながら読了となってしまったのでした。
・・・なんか、かなり微妙な感想になってしまいましたが;;;
ただ、「言葉の力」というものを凄く感じられた作品ではありました。「言霊」という言葉があるように、言葉にすればそれは何らかの力を持つようになる、というのは私も今までに感じたことがありましたが、それを改めて感じることが出来た作品でした。そして、言葉の力で誰かを救うこともできるんだということも、また強く感じることが出来たのでした。そして、道尾さんが綴られたこの文章から受けた、衝撃や悲しみ、優しさなどに、強く心を揺さぶられたりもしたのでした。
ということで、全くツマラナカッタ、キタイハズレダッタ、ということではないんですよ。でも、ずずーんと落ちたテンションが微妙なところで右往左往してるというような、なんともスッキリしない読書となってしまったのでした。
(2015.03.24 読了)
モヤモヤ感、すごく解ります。
まさか、こういう、予想外な展開がラストに待っているとは。
でも
>「言霊」という言葉があるように、言葉にすればそれは何らかの力を持つようになる~ それを改めて感じる
まさに、そうですね。
私も、彼のついた、優しい嘘というか、なんというか・・しばし考えさせられる処がありました。
道尾作品、ずっと新作出るたびに読んでいらっしゃるんですね。
私は、「ノエル」以降から、本作の間に出た小説は、なんとなく読んでなくて、久しぶりだったのですが、道尾さんの良い処、変わってないなーって思いました。
道尾作品ってラストで「えぇーっ!」と驚かされることが多いんですが、今回はその展開が重すぎて受け止めきれない…そんな感じでした。ホント、まさか、でしたよね。
道尾さんは追いかけてる作家さんの一人なんですよー。なので、新刊が出る度にワクワクしながら手に取ってます。久しぶりな道尾作品を楽しまれたようで良かったですね!