初読み作家さん。連作短編集。
大店に嫁いだおこうは子供に恵まれず、夫が浮気をし子まで成したのを機に離縁し実家に戻るが、兄や裏で糸を引く兄嫁に心休まることがない。そんな時、幼い日に乳母として自分を可愛がってくれたおとわのことを思い出し、訪ねていくと「三春屋」という口入れ屋を開いていて・・・。
タイトルとあらすじに惹かれて手に取ったんですが、読み始めたときは、「あれ、ちょっとハズレだったかなぁ・・・」と思ったんですよね。でも、読み進めていくほどに面白さが増していって、気付いたら一気読みしてました。初読み作家さんだったので、文章に慣れて乗れるまでにページ数がちょっと必要だったのかな。
江戸時代を舞台にした人情物だと思っていたら、いつの間にやらミステリーのようになっていって、最後は、どうなる?どういうことーっ!?と、ドキドキハラハラしちゃいました。まさかまさかの展開で、驚きつつも、胸がすくような痛快さも感じられて嬉しかった。その上、人情物の要素もしっかり入っていて、最後は思わず涙腺が緩んじゃったりもしました。
なんと言っても、おこうが三春屋の女主人として、人と人の縁を結んでいきながら、自分の縁もまた自然と結んでいく様子が嬉しかった。もちろん、やるせない気持ちになったり、切なくなったり、憤ったりもしましたが、どれもこれもが無駄ではなかったと思うし、だからこそ、最後は幸せを掴めたんだと思えるラストで喜びも倍増でした。
嫌な思いはしない方がいいに決まってるけれど、でも、それがなかったら、今の自分はいないんだ。あの人とは出会えなかったんだ。そう思う出来事が私にもあります。なので、そう思える自分は幸いなんだと、そんなことも思ったのでした。
おこうの最初の結婚は不幸でしたが、これからは幸せな人生を歩んでほしいなぁと心から思いながら読了。うん、良かった。
(2015.03.22 読了)
2015年03月24日
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
この記事へのトラックバック