2015年02月19日

怒り(上・下)(吉田修一)

うーむ。うーーーむ。うむむむむぅ。
・・・と、唸りたくなるような、なんとも読後感の悪い作品でした。

上下巻というボリュームに慄いて読もうかどうしようか迷っていたんだけど、本屋大賞にノミネートされたので「これは読まねば!」と思って手に取りました。


八王子市の住宅街で起こった夫婦惨殺事件。犯人はすぐに特定されたものの、逃亡して1年が過ぎても捕まらない。そんな頃、房総半島に住む父娘、東京にすむゲイの青年、沖縄の離島に移住した高校生の前に現れた前歴不詳の男性。それぞれが、謎の男性に惹かれていくが・・・。


たしかに面白かった。特に上巻。もうね、どうなる、どうする、どういうことーっ!?ってな感じで、先へ先へとページを繰る手が止まらない。そろそろ寝なきゃ・・・と思ってはいるんだけど、先が気になって寝れなーい!そんな読書となりました。下巻も終盤近くまではそんな感じで読んだんですけどね。いかんせん、ラストがねぇ・・・。こういう終わり方って、これはこれでアリだとは思うけど、モヤモヤばかりが残ってしまって、なんともスッキリしない。おまけに重い。もう、めちゃくちゃ重い。ずずーんときて、それがなかなか払拭できない、そんな感じでした。


*****

ちょっとネタバレ含みます。
未読の方はご注意を。

*****








なんといっても、辰哉がね;;;彼のことを思うと堪らない気持ちになります。切ないとか、痛いという言葉では足りない。高校生の彼が、どうしてこんな重い荷物を背負わなければならないのか。泉の母親の気持ちも分からないでもないけど、自分の娘の為の行為だったのに・・・。自分たちだけ逃げるのか?と、どうしてもそんな思いがよぎってしまって、割り切れない気持ちになりました。

そして、ゲイカップルの結末も堪らないものでした。どうして・・・と思わずにはいられない。彼はずーっと後悔を背負っていかなければならないんですよね。そこまで辛い運命を背負わせなくてもいいのに・・・と、そんなことをついつい思ってしまいます。

それにしても、「人を信じる」って本当に難しい。親しくなればなるほど、知りたいという思いは強くなるし、それを隠されるとアレコレ想像してしまって、疑う気持ちも芽生えてしまう。すべて教えて欲しいという気持ちは、何度蓋をしても開いてしまうものです。その気持ちを抑えきれなくなって、つい・・・。そして、後悔の日々が始まるんですよね・・・。登場した父娘のように、なんとか挽回できればいいけれど、そうでなければ一生、後悔したままなんでしょうか。辛いなぁ・・・。

読み終わって、こんなに重く苦しい気持ちになる小説も久しぶりでした。もうちょっと、生きてる人たちに希望が見えるようなラストにして欲しかったなぁと思ってしまいます。結局、最初の事件の動機とか、真相も分からないままだったし。

もう、ホントにね、なんとも後味の悪い作品でした。インパクトはあったけどね。





(2015.02.17 読了)





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吉田 修一

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posted by すずな at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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