40歳目前、文芸誌の副編集長をしている女性が、休みの度に山に登り、心が少しずつ救われていく・・・そんな連作集。
実際にはそんなに簡単なものじゃないと分かっていても、この小説を読んでいると、ついつい「うわー私も山に登ってみたーい!」と思っちゃいます。そして、「私でも登れそうだなぁ・・・」と勘違いしちゃいそうになります。だって、山についての魅力が満載だし、主人公は同年代だし。出来そうな気持ちになっちゃうのも無理はないと思うんですよねぇ。
・・・と、テンションが上がったんだけど、小説の最後にきちんと注意書きがしてありました。私のような勘違い者が出ないような配慮ですね(笑)
登山に向かう前の準備の様子が描かれてるんだけど、そこで主人公がチョイスするのが文庫本とおやつ。その携行食の数々が美味しそうで!甘いもの、辛いものの組み合わせに、「うわ、それ私にもくれー!」と何度も思いました(笑)そして、文庫本のチョイスもね、なるほどーと思ったり、それ読んでみたいなぁと思ったりしました。
3年前に別れた恋人に想いを残す主人公は、その想いを振り払うかのように休みになると様々な山に登る。槍ヶ岳や常念岳、冬には雪山ツアーに参加したり。山の魅力に接したり、登山を通じて知り合った人と触れ合ったりしながら、その想いが少しずつ変化していく。昇華していくって感じかな。最後に、偶然にもかつてに恋人と再会するんだけど、そのシーンが印象的でした。心穏やかに再会できて良かったなぁと思いました。
--思い通りの道を行けないことがあっても、ああ、今がいい。わたしであることがいい。(p203)
という言葉が印象に残っています。思わず涙腺がゆるんじゃいました。私もそんな言葉がスルリとこぼれる様な、そんな境地に辿り着きたい。
・九月の五日間
・二月の三日間
・十月の五日間
・五月の三日間
・八月の六日間
(2014.07.03 読了)
2015年01月29日
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八月の六日間 北村薫
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Tracked: 2015-01-31 00:52
「八月の六日間」 北村 薫
Excerpt: 八月の六日間 40歳目前、文芸誌の副編集長をしているわたし。 仕事は充実しているが忙しさに心擦り減る事も多く、私生活も不調気味。 そんな時に出逢った山の魅力にわたしの心は救われていき……。 じんわりと..
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Tracked: 2015-09-07 22:40
北村さんの本を読むのがとても久しぶりでした^^面白かったです。ただ、この本を読んでも私は山に登りたいとは思いませんでした^^;私、山登りほんっとうに苦手なんです^^;上り坂が苦手で。
じゃあなんで読んだんだっていう感じですが主人公が山に登ることでいろんな自分の想いを清算しているのがいいなと思いました。
そして文庫とおやつのチョイス!私もそこが好きでした^^
私も旅行へ行くときは文庫本を2,3冊持っていきます。それを選ぶのもまた楽しかったりするんですよね。
実は私も山登りは苦手なんですけど、この本を読んだら登りたくなっちゃったんですよねぇ(^^;さすがにすぐに思い直しましたけど(笑)
山に登ることで自分の気持ちと向き合って清算していく姿が良かったですね。やはり、文庫本とおやつのチョイスは気になりますよね~。
私も旅の時には文庫本を持っていかないと落ち着かないんですが、苗坊さんと違ってほとんど読まずに帰宅してしまいます(^^;
こちらの記事を読んでずっと私の「読みたいリスト」に入れていたのですが、やっと読めました。
山登り、毎回登り始めてすぐに後悔するんですが、それでもこういった本を読むとちょっと山登りっていいかも。。と思ってしまいますが、それでも主人公の登るような山はレベルが高すぎてとてもとても・・
それでも本は疑似体験ができるからなんだかお得な気分です。
わ~嬉しいコメントをありがとうございます!
山登りをされるんですね。もうそれだけで私的には凄いことです!
読書って、こんな私でも登山した気分になったり、他にも色んなことを体験した気分になれるので良いですよね~。ホントお得な気分になりますね。