日本で初めて雪の結晶を顕微鏡で観察し、それを一冊の本にまとめたのは下総古河藩主の土井利位。その御学問相手として雪の結晶集めに助力した小松尚七を描いた作品。
その探究心のせいで「何故なに尚七」と呼ばれる尚七が、雪の結晶を探しているところに通りかかった藩の重臣である鷹見忠常に声をかけられ、その縁で世継ぎの土井利位の御学問相手に選ばれる。尚七を中心に雪の結晶を観察し、その結晶図をまとめ、後に「雪華図説」「続雪華図説」として出版された。
雪の結晶を集めるだけではなく、藩主、重臣、藩士として立場の違う3人が、それぞれの立場で藩や民の為に奔走する姿に胸を熱くした場面もありました。途中、大飢饉に襲われたり、大阪の「大塩平八郎の乱」に遭遇した場面もあり、立場が違う故に相容れない思いがあったことも描かれていました。そこで葛藤したり、後になって、あの時のアレはこういうことだったのか!と分かり、複雑な心境になったり。尚七の心の動きを通して、藩主や重臣の在り様を見ることができました。三者三様でも、同じ志を持つ同志として通じるものもあって、今よりもずっと”立場”というものに縛られていた時代に、こうして心を通わせることは難しく、だからこそ、大事な心の支えとなったんだろうなぁと思いました。
それにしても、冷凍保存という技術もない江戸時代に、雪の結晶を採取し図にまとめるなんて本当に大変な作業だっただろうと思います。顕微鏡で見ようと顔を近づけると、自分の吐く息で融けてしまう・・・。雪の降る日しか出来ないということは、寒さに震えながら作業する訳で、寒さとの闘いでもあったでしょうし。どんな本だったんだろう、見てみたいなぁと思ってネットで検索したら、見れました!いろんな結晶図があって、そこに尚七を始め、忠常や利位の思いや情熱が感じられて、しばし見入ってしまいました。いつか、現物が見たいものです。そんな機会があるといいなぁ・・・。
(2015.01.18 読了)
2015年01月21日
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