読了した順に記事をUPしてるんですが、これは「読了した今、記事にしておきたい!」と思ったので順番が違ってきますが、先に記事UPしたいと思います。
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良かった!良い作品だったし、読めて本当に良かった!と思いました。
東日本大震災で津波に飲み込まれ機能停止した日本製紙石巻工場。日本の出版紙の4割を担っているその工場が半年で復興を果たした軌跡を追ったドキュメンタリー。
気がつくとずっと本のページを撫ぜながら読んでいました。その手触り、厚さ、色。本を読みながら、その本を形作っている”紙”をこんなに愛おしく感じたのは生まれて初めて。そして、「本はやっぱり”紙の本”だよ!」そう言いながら、その紙がどこでどうやって造られているのか知らなかったことをすごく恥ずかしく思ったのでした。
まずは、あの日、何が起こったのか。それぞれがどう行動したのかが綴られている。そして、被災した工場の様子や工場再建へと動いていった様子が語られる。その中では、報道されなかった現地の様子が赤裸々に綴られている部分もあって、綺麗ごとだけでは済まされなかった被災地の様子が伝わってくる。日ごとに強くなる臭い、目の前で自販機を襲撃していった人、コンビニや店舗などからの強奪の様子、車からガソリンを抜いていく人々、事実無根の心ない噂・・・。そんなことも包み隠さず書いてあって、余計に「ノンフィクション」の持つ力みたいなものも感じました。
自分たちの生活もままならないという過酷な状況の中、やるせない気持ちになったり、徒労感に襲われたりしながら、それでも前を向いて進んでいった人たちがいた。その姿というのは、今までも様々な形で伝わってきてはいましたが、改めて、その尊さを感じることが出来ました。
一口に「紙」と言っても様々な種類があるというのは分かっていましたが、同じ文庫本でも出版社によって違っているというのは目から鱗でしたねぇ。もちろん、言われてみれば当然のことなんだろうけど、今までそんなこと思いもしなかった!というのが正直なところ。この本を読んだら、本棚の本を1冊ずつ手にとって比べてみよう、そう思いながら読み進めました。
「この工場が死んだら、日本の出版は終わる……」
そんな想いを抱え、「工場は死んだ」と言われる中、「半年で復興させる」と宣言した工場長。その言葉に、社員も関係会社の人々も一丸となって復興へ向けて進んでいく。電気やガス、水道が復旧してないのはもちろん、自分たちの食料を入手するのさえも大変なとき。でも、「渡された”たすき”は何が何でも次に繋げる」そんな想いを抱え、誰も弱音を吐かず、復興へ向けて闘っている姿には胸が熱くなりました。
その上、日本製紙の関係者だけではなく、「どんなことをしてでも、日本製紙さんの分まで出版用紙を最優先で作ります」(p134)とバックアップを惜しまなかった同業の王子製紙を始めとした製紙会社や工場が再稼働したら「今まではほかの製紙会社さんにお世話になったので、これからしばらくは日本製紙さんにお願いします」(p232)といち早く『ONE PIECE』『NARUTO』用の紙を発注してくれた集英社を始めとした出版社の心意気にも感動して、もうね、最初から最後まで溢れる涙を止められませんでした。
本文が終わり、さらにページを繰っていくと奥付の前272ページに書かれた文字を見て、また本をめくりなおす。本文ページや写真のページ、そして表紙を撫でる。紙を撫でる。
これからも、製紙工場から出版社へ。そして、書店から私の手元へと駅伝のように紙がつながっていく。それは当たり前のことじゃなく、「つなぐんだ」という沢山の人々の想いや努力があるからこそなんだ。沢山の人々の想いがこもった本。ありがとう。本当にありがとう。私の手元にずっと本が届いていたのは、彼らの矜持とその想いのお陰。それを忘れないようにしなければ。表紙の写真を眺めながらそんなことを思ったのでした。
(2014.07.01 読了)
2014年07月04日
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紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 佐々涼子
Excerpt: 紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている著者:佐々 涼子早川書房(2014-06-20)販売元:Amazon.co.jp 「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です..
Weblog: 苗坊の徒然日記
Tracked: 2014-07-17 22:51
すずなさんの記事を拝見してさっそく手に取りました。読んでよかったです!きっかけをありがとうございます!
電子書籍よりもやっぱり本が良いっていつも言っているにもかかわらず、紙はどこで作られているのかなんて考えたことがありませんでした。
石巻工場の復興の様子は読んでいてなんどもうるうるしました。読んでいて目を背けたくなるところもたくさんありましたが、それもまるっと含めて読んでよかったです。
私もこれからは紙を愛おしむ様に本を読んでいく気がします^^そして、やっぱりちゃんと本は買わないとなと思いました^^;
教えてくださってありがとうございました!
こちらこそ、こんなつたない記事からお手にとっていただけて嬉しいです。ありがとうございます!
私も同じです。「本はやっぱり紙!」といいながら、その紙がどこで造られているかなんて考えたこともなかったです。この本を読んで”知らなかった”ことを反省したのでした。
復興の様子は胸に迫ってきましたね~。私も涙腺がゆるみっぱなしでした。目を背けたい部分もありましたが、それも含めて読んでよかったと思える1冊でしたね。そして、本を形作っている”紙”に対しての思いも変わりましたよね。
とりあえず、この本は「買って読まねば!」という気持ちで購入しましたが、他の本についても苗坊さんのおっしゃるように出来る範囲で「買って読む」というのを心がけたいと思いました。
こちらこそ、ありがとうございました!