著者が初めて現代の家族を描いた短編集。
タイトルからも分かる通り、どの短編も鉄道に関わるお話。最初の1編から心を掴まれ、その後はそのまま流れるように一気に読了。「みをつくし料理帖」など、人情物が多い高田さんらしく、ほっこりしたり、切なかったり、でもちょっとヒヤヒヤしたりの作品集でした。涙腺の弱い私は、銀行の待ち時間に読み始めたことを後悔しちゃったお話もありました。
特に好きだったのは、夫の不審な行動に気づいた妻が夫を尾行することにした「お弁当ふたつ」、駅うどん屋を営む男性の元に孫が訪ねてきた「ムシヤシナイ」かな。どちらも私らしいチョイスだと笑われそうなんだけど(笑)涙腺を刺激されて、思わずうるうるきちゃいました。優しい気持ちになれたなぁ。あと、電車の窓から見える老夫婦の様子を絡めながら乗客を描いた「車窓家族」も好きでした。
ちょっと怖かったのは「雨を聴く午後」。ちょっとじゃなくて、これはかなり怖かったよー。読んでいるとウッカリそんなことを感じず、流れで読んじゃいそうになるけど、この主人公ってめちゃくちゃアブナイヒトでしたよねぇ;;;ゾッとしました。そして、この作品と対になっている「あなたへの伝言」。良いお話なのに、その前に読んだ作品からの流れでなんだか微妙な感じで・・・。ある意味、このお話のお陰で怖さが倍増されたような、そんな二編でした。
「晩夏光」はその覚悟と強さに感嘆したし、息子の立場で読むと泣けてしまった。「返信」は息子を亡くした夫婦旅の話で、こちらも胸にグッとくるものがありました。
北海道のローカル路線駅のある地方に住む女子高生の進路に関するお話「ふるさと銀河線」、過去から届いた手紙に導かれて始まった同窓会を描いた「幸福が遠すぎたら」も、じんわり沁みるお話で良かったなぁ。
・・・結局、どれも良かったってことですね(笑)
そんなこんなで、期待を裏切らない素敵な短編集でした。
・お弁当ふたつ
・車窓家族
・ムシヤシナイ
・ふるさと銀河線
・返信
・雨を聴く午後
・あなたへの伝言
・晩夏光
・幸福が遠すぎたら
(2014.03.29 読了)
2014年06月26日
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