俵万智さんの第五歌集。
東日本大震災が起こったことで、小さな息子さんを連れて仙台から南へ南へと逃げていき、最後に石垣島にたどり着く。その軌跡を詠んだ歌の数々。
デビュー作となった「サラダ記念日」から欠かさず手にしている万智さんの歌集。今回ほど、胸に迫り、ぎゅーーーっと心を掴まれた歌集はありませんでした。そして、たったの31文字で目の前に景色が立ち上がっていく、その凄さに、心底、圧倒された1冊でもありました。「凄い」その一言しかありません。
ゆきずりの人に貰いしゆでたまご子よ忘れるなそのゆでたまご(p13)
仙台から石垣島へと移っていく時に詠まれたこの歌に涙が止まらなかった。たった31文字なのに、もう覚えてしまったのに、それでも何度も読んでは、その度に涙が溢れてしましました。今でも、ついつい涙腺が緩んでしまいます。
南へ南へと向かう最中に詠んだ歌の悲壮さすら感じる歌に比べ、石垣島へ移ってからの息子さんの様子を詠んだ歌には希望が見えて、これもまた良かった。伸び伸びと南の島の暮らしを満喫する息子さんの様子に、こちらが救われたような気持ちになりました。
この息子さんの言葉がまた凄いんですよねー!あとがきで書かれてるんですが、「電子辞書」とは何ぞやと万智さんに聞いて、そして出した答え。
「便利だね!でもオレは、コロコロコミックをめくるとき、顔に感じる風が好きなんだよなあ」。(p158)
その通り!と膝を打ったのは私だけではないはず。その感性が素敵です。どうか、このまますくすくと成長してください。
(2014.01.12 読了)
2014年05月18日
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