執行猶予の判決が出た時に、その加害者を刑務所に入れるかどうかを被害者や遺族が決めることができる。そんな制度が出来た社会を設定に、その被害者や遺族との連絡役を務める担当係官を主人公に描いた作品。
一概に加害者といっても、故意ではなく、様々な要因で加害者という立場になってしまった人もいる。そんな人たちにも、この「執行猶予被害者・遺族預かり制度」は適用されるんですよね。中には、野球部の練習中に息子を亡くしコーチを訴えた家族というのも登場するんですが、このコーチを加害者としてこの制度を適用するっていうのはどうなのかなぁ・・・とか、ちょっと思ってしまったのでした。もちろん、息子を亡くしてしまった家族の心情を思うと、その気持ちも分からないでもないし、そういう気持ちになるのも当然なんだろうとは思うんだけど。でも、故意にやった訳でもないわけだし、それを遺族の裁量ひとつで刑務所に入れるか入れないかを判断できるっていうのは、なんだかモヤモヤが残ってしまうのを否定できない。第三者的な立場から見てると、感情で人を裁くのはどうなのかなぁと思ってしまうんですよねぇ。これって、全く公正な制度じゃないんですもんね。被害者や遺族の心情に寄り添っているとはいえ、その人たちの裁量次第。同じ加害者で、同じように執行猶予期間を過ごしていても、被害者や遺族によって、刑務所に入る人もいれば、入らない人もいる。この差は大きい。それだけで、うーーん;;;と思ってしまいます。
でも、もし私が被害者や遺族となったら・・・。そう考えると、感情的にならず、冷静に判断できるかっていうと、それはそれで全く自信はないし、私に刑務所に入れるかどうかの判断をさせろ~!と思ってしまうのかもしれないなぁとも思えるんですよねぇ。
そんなこんなで、モヤモヤがどんどん膨らんでいって、なんだかスッキリとしない、そんな読書となってしまいました。
人を憎むこと、そして、許すこと。それは、本当に人それぞれだって分かっていても、それをすんなりとは受け入れ難いものですねぇ。ホント、難しい。
(2013.09.16読了)
2014年01月22日
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