2013年05月13日

碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート(福田和代)

福田さんといえば硬派な政治テロとか警察ものを書く作家さんというイメージだったんですが、そんなイメージを覆すような柔らかな表紙と内容でした。

航空自衛隊の航空中央音楽隊を舞台にした日常の謎を描いた物語。自衛隊の音楽隊を描いているのに、作品の内容は”日常の謎系”っていうギャップが面白い。でも、せっかく自衛隊を扱ってるんだから、もうちょっと自衛隊色が強くっても良かったんじゃないかなぁとは思うんだけど。自衛隊を舞台にした意味があまり感じられないような、そんな気持ちもふっとよぎったり。

音大を卒業後、音楽隊の隊員となって3年ほどが過ぎた鳴瀬佳音。アルトサックスを担当している彼女が遭遇した謎。学生時代に体験した不思議な出来事。イベントで関わった学生の頑なな様子と彼が抱えている事情。写真家から託された戦場で行方不明になった友人から送られた絵葉書の意味とは。などなど、陰惨な事件や事故とは無関係なちょっとした日常の謎をちょっとドジな佳音が仲間と共に解決していくという連作短編集。

主人公は佳音ですが、1編だけ佳音の同僚である渡会くんを主人公にした物語もありました。これがまた、報われない恋心を描いて、ちょっと可哀想になりながら、思わず笑ってしまったりする可愛らしいお話でした。結構、好きだったなぁ。

一番好きだったのは、1章目の「ギルガメッシュ交響曲」かな。厳重に管理されているハズの自衛隊音楽隊の楽譜庫から無くなったアルトサックスパートの楽譜。楽譜の行方と佳音の前任者の不可解や退職理由が明らかになった時は、ちょっとジーンとしてしまいました。

その他の章も良かったなぁ。ちょっとジーンとしちゃうようなお話ばかりで、涙もろい私はちょっと涙腺が緩んじゃったところもありました。


巻末には著者の航空自衛隊音楽隊を紹介する文章も収録されていて、それも良かったです。

これって、シリーズ化されるのかな。また佳音に会いたいなぁ。そして、おいつか渡会くんの思いが報われる事も祈ってます(笑)




・ギルガメッシュ交響曲
・ある愛のうた
・文明開化の鐘
・インビジブル・メッセージ
・遠き山に日は落ちて -渡会俊彦の場合-
・ラッパ吹きの休日

・航空自衛隊の音楽隊は、こんなところです!



(2013.04.30読了)





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ラベル:著者(は) 読書
posted by すずな at 15:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ここでは、お久しぶりです。
タイトルを見て、思わず片山一尉が目に浮かびました。「くうおん!?」って。笑
Posted by 香桑 at 2013年05月22日 11:23
>香桑ちゃん
ホントだね~久しぶり~(笑)
うははは。分かる、分かる!この作品も空幕広報室長からアプローチがあったらしいよ。やるなぁ、広報室長!
Posted by すずな at 2013年05月22日 12:37
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