良かったー!
「チェーン・ストーリー」と銘打たれたこの作品。日本語に直せば「連作集」ってことでしょうか(笑)ひとつひとつは独立してるんだけど、ほんの少しずつ繋がっていて、その繋がりが最後に見事に絡み合って素敵なラストを迎える。あぁ、良いお話を読んだなぁ・・・としみじみと思える作品でした。
1作目の「光の箱」は以前、雑誌「Story Seller 小説新潮5月号別冊」にて既読だったんですよね。実は、この短編が道尾さんとの出会いの作品だったんです。すっごく気に入ったので、既刊本を手にしたら、これがもうね、どれも面白くって!すーっかりはまってしまったんですよね。そんな訳で、私的には道尾さんと出会った記念すべきお話なので、こうして、この短編から始まる物語という形で単行本を読めたのは、本当に感慨深いものがありました。
同級生達からの暴力を受ける中学生、妹の誕生と祖母の病で不安に陥った小学生、妻を亡くして生きる気力を失った元教師と、どのお話も主人公が抱えているものは重く辛いものばかり。それが、物語を作ったり、物語と出会ったりしたことで、少しずつ希望というかね、そんなものを取り戻していったりする。最悪の結果を想像してハラハラドキドキさせられつつ、最後は「あ~良かった」と胸を撫で下ろしてほっこり出来るお話ばかりでした。このドキドキとほっこり具合がまた絶妙でして、とーっても楽しめました。あぁ、道尾作品だなぁ~と読みながら嬉しくなっちゃいました。
また、作中作として書かれている童話のようなお話も良かった。クリスマスのお話はもちろん、カブトムシのお話とかね。優しさ、温かさ、そして希望。じわじわと沁みるような素敵な物語でした。作中作として読んだ方がより効果的だとは分かっていますが、この物語だけで独立した1冊の本としても読めるんじゃないかなぁと思いました。
3つのお話が最後の「四つのエピローグ」で見事に繋がっていく様は、本当に良かった。思わず涙・・・。まぁ、ご都合主義と言ってしまえばそれだけなのかもしれないけれど、こういう奇跡が起こったっていいじゃない。現実でもあるかもしれないよ。そう思える、思わせるパワーがありました。だって、タイトルが「ノエル」ですからね。クリスマスには何が起こるか分からないってもんです!←かなり身贔屓入ってるかな(笑)
クリスマスにもう一度、読み返したい素敵な物語でした。
・光の箱
・暗がりの子供
・物語の夕暮れ
・四つのエピローグ
(2012.10.23読了)
2012年11月23日
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道尾秀介/「ノエル -a story of stories-」/新潮社刊
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作中作もとても良かったですよね。単独で絵本として出版して欲しいと思っちゃいました(笑)。
そうなんですよー!この作品が道尾作品との出会いになったので感慨深かったです。
そして、べるさん同様、あのお話からこんな風に膨らんで1冊にまとまったかと、本当に感激でした~。
作中作、絵本として出版して欲しいですね!!