あぁ、旅に出たーい!飛行機でびゅ~んとひとっ飛びってのもいいけれど、の~んびりガタゴトな鉄道の旅もいいなぁ。ぼーっと車窓から景色を眺めつつ、駅弁に舌鼓をうったりもして。あぁ、いいなぁ・・・と、そんなことを思わせるお話でした。
四十九院香澄は関東の大学にある「鉄道旅同好会」に入るために、進路を曲げて上京。鉄道には全く興味がなかったが、かつてその同好会に所属して旅の途中で失踪したまま帰ってこなかった叔父を探すのが目的だった。叔父の行方を探しつつ同好会のメンバーとして鉄道の旅を始めた香澄は、いつしか鉄道の旅にも惹かれはじめ・・・。
お話よりも何よりも、主人公の名前が変わっててね~。途中で何度も最初に戻っては、苗字の読み方を確認してしまった(笑)”四十九院”と書いて「つるしいん」と読むんだそう。もうさぁ、主人公の名前は覚えやすいのにして欲しいよ;;;と思ったのでした。
と、いきなり「そこ?」と突っ込まれそうな感想から始まってしまいましたが(笑)
叔父が失踪した理由や行方を探すというミステリーになっているものの、鉄道旅の連作短編集のような構成になっている。一路線をじっくり味わう旅。日本全国にある様々な旅を香澄と一緒に体験し、満喫したような気分になりました。鉄道旅の途中で出会った人々との交流も描かれていて、ちょっとドキドキしたり、切なかったりと、楽しめたのも良かった。とある路線では、不思議な行動を取る女性の目的をアレコレ推理したり、別な路線旅で再会して謎解きも出来たりと、叔父の行方以外でもミステリーを味わえたのも良かったなぁ。
実際に行ってみたい!と思ったのは氷見線と沖縄都市モノレールゆいレールかな。氷見線で見れるという絶景は、もうね、どんなんだろう?と想像を掻き立てられて。いつか、本当に見に行きたいと思いました。あと、沖縄はまだ行ったことがないので、同じ九州に住む者としては一度は訪れてみたい場所なんだよね。
そうそう!「急行能登」にも乗ってみたい。ていうかね、寝台列車に乗ったことがなくって、一度は体験してみたいことの一つなんだよね。未踏の地である北陸に急行能登で行ってみるか!とか、読んだイキオイで思ってしまったんだけど、実際に行くとなるとね、お財布様の意向や時間的なこととかで難しいんだろうなぁなんて、どうしても現実的なことを考えてしまいます(苦笑)
最後はJR常盤線の旅。この旅の後に東日本大震災が起こってしまう。実際に、著者が体験したのも主人公と同じような時期に同じ旅だったんだそう。そして、この作品は東北の旅を描いたものとの2冊同時刊行を予定していたものの、震災の影響で取材も含めて出来なくなって、この1冊だけの刊行となってしまったとのこと。ここにも、こんな形で震災の影響が出てるんだなぁと、改めて震災の凄まじさを実感したのでした。
「また来よう」と無邪気に思えなくなったとあとがきに書かれていました。そうだよね。「また来よう」ではなく、その時に出来るだけ沢山のことを体感できるような旅をこれからはしていきたい、そう思いつつ読了したのでした。
東北を含めて後編の旅を執筆中とのこと。叔父さんの行方と共に、香澄とどんな旅が出来るのか楽しみに、首を長ぁ~くして待ちたいと思います。
・夢より短い旅に出る【横浜高速鉄道 こどもの国線】
・夜を走る【急行能登】
・非行少女の時をゆく【北陸鉄道浅野川線】
・絶景へと走りこむ【氷見線】
・いつか終わる旅【JR日光線】
・長い、長い、長い想い【飯田線】
・新しい路【沖縄都市モノレールゆいレール】
・旅の果て、空のかなた【JR常盤線】
(2012.08.31)
2012年09月07日
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