SFファンタジーって感じかな。連作短編集のような長編小説でした。
良かった!
最後は思わず涙腺崩壊でした。最初の章を読んだ時には、まさか最後にこんな感動が待っているとは思いもよらなかったですねー!東野さんの掌の上でまんまと転がされたって感じです。でも、それが本当に心地よくって、読了後、しばらく浸ってしまいました。ここ最近の東野作品には、ちょっと物足りなさみたいなものも感じてたんですが、この作品では全くそんなことを感じなかったです。
ネタバレ・・・しないように書いたつもりだけど、してるなぁ。。。
ということで、未読の方は、ここで引き返すことを強く、強く、お勧めします!!
手紙を介してあらゆる悩み相談にのる「ナミヤ雑貨店」を舞台に、過去と現在が交錯したり、悩み相談者や回答者などの人間関係が絡み合ったりする。まぁ、この交わり具合とか、絡まり具合が堪らない!!まさに絶妙なバランスの上に成り立っているという感じでして。ひとつタイミングが違えば、この「奇蹟」は起こらなかったんだなぁ・・・と、しみじみしちゃった。
泥棒を働き、廃屋のようになっている「ナミヤ雑貨店」に辿り着いた3人の少年、余命幾ばくもなく病床にある恋人と五輪出場への夢のどちらを取るかを悩む女性、音楽の道を捨て家業を継ぐべきか悩む青年、「丸光園」を出て進むべき将来に迷う女子大生、「ナミヤ雑貨店」店主とその息子、親が夜逃げをすると手紙に書いた男子高校生・・・などなど。相談者と回答者の時間軸が行きつ戻りつしながら物語は進んでいく。
最初に登場したのは3人の少年だったんですが、その章を読んだ時には、そんなに期待の出来る話ではなさそうだなぁ・・・。過去と現在での手紙の交換ってことで、まぁ、ちょっとしたSF系かな、という感覚だったんですよね。このまま、届いた手紙に少年達があれこれ回答をしていくような、そんなお話なのかな、と。ずっと、彼ら視線で語られる物語だと思ってました。
それが次の章では主人公が相談者に変わり、時代までぐっと遡ってしまってたんですよね。「え。あれ?」って軽い驚きと戸惑いを感じつつ読み進めたんですが、もうね、その後はずんずんと物語に惹き込まれて、気付いたら最後の章でした。
そして、最後の章。それまでの章が全て伏線だったのか!と唸らされました。あれもこれも、そして、あれもっ!?・・・と驚きを隠せないほどの繋がりが私のツボをこれでもか、これでもかーっ、と押しまくりました。奇蹟の根源は、児童擁護施設の「丸光園」園長と「ナミヤ雑貨店」店長の出逢いから。二人の想いがこの「奇蹟」を演出したんでしょうね。なんといっても、この章のタイトルがいい。きっと二人が空の上から、この一連の奇蹟を見つめているんだろうなぁ、と思えました。それも、溢れんばかりの愛情を抱えて。
またね~、最後の手紙が良かった!あの白紙に書いた浪矢さんの最後の返事。まさか、あれがこう繋がってくるとは!という驚きと、その手紙の内容に、堪らず涙腺崩壊でした。もうね、ぼろぼろと泣いてしまいました。
もちろん、相談者みんなが幸せになるってことではないんですよね。悲しい最後を迎えた人もいた訳で、それはね、ちょっと残念でした。出来れば、彼も救って欲しかったと思ったし、彼女にも子供と幸せに暮らして欲しかったと思ってしまいます。
それでも、読み終わって最後に胸に残るのは、ほんわかと温かな気持ちとしみじみと沁み渡る優しさでした。
良い作品でした。大満足。
第一章 回答は牛乳箱へ
第二章 夜更けにハーモニカを
第三章 シビックで朝まで
第四章 黙祷はビートルズで
第五章 空の上から祈りを
(2012.06.08読了)
2012年06月15日
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タイトル通り、奇蹟がいくつも重なって出来た話でした。ナミヤさんと園長さんの過去にはぐっと来ましたね。ちょっぴり切なかったですけど。空の上で二人仲良くしているといいな、と思います。泥棒三人組も、これから更生して全うな人生を歩んで欲しいですね。最初はムカッと来た彼らでしたが(^^;)、最後には頑張れ!と応援してあげたくなりました。
最初の少年たちのくだりではどうなることかと思いましたが、いろんな人がいろんなところでからんでいて読んでいて引き込まれました。
彼らもこれをきっかけに前を向いて生きていってほしいなと思いました。
完成度の高い作品でしたね!
雑貨店と施設の繋がりってなんだろうと思ってたんですが、ナミヤさんと園長さんの過去には胸をつかれました。きっと、二人で空の上から見守ってくれてるんでしょう。
3人組にも素晴らしい人生を歩んで欲しいですね。私もべるさんと一緒で、最初に登場した時は、最後にこんな思いを彼らに抱く事になるとは全く思いませんでした(笑)
ホントにいろんなことが絡んできて、最初からは想像出来ないようなお話になりましたよね~。とても良かったですね!
私も彼ら3人にも前を向いて歩いていってほしいと思いました。
そうそう、第一章は妙に軽かったから、どうなることやらと思いましたね 笑
もしかしたらそれすらも、このハートフルな物語の伏線だったのかも 笑
第一章からは想像出来ない展開でしたねー。たしかに伏線だったのかもしれません。まんまと騙されたって感じですね(笑)