古道具屋「鳳来堂」を営む音松とお鈴夫婦の元にやってくる古道具や飛び込んでくる人々との交流を描いた連作短編集。
この作品の続編である「夜鳴きめし屋」を先に読んじゃって、慌ててこちらを手に取った次第。こういうこと、よくやるんだよねぇ;;;まぁ、続編とは言え、「鳳来堂」という名前はそのままだけど、古道具屋と夜鳴きめし屋と商売は替わってるし、主人公も古道具屋は音松で、夜鳴き飯屋は音松の息子である長五郎になっているんだけどね。ということで、特にこちらを先に読んでなければ・・・ということはなかったかな。ただ、音松の友人達については、この「ひょうたん」を読んでからの方が、あれこれ思うところもあったりして、しみじみ出来たかなぁ・・・とは思った。その辺は残念でした。
ということで、こちら「ひょうたん」について。
人情味溢れる江戸町人達のお話でした。なんといっても、音松とお鈴夫婦のやりとりが良かったなぁ。ついつい情にほだされてしまう音松にブツブツと文句をつけながら、実はそんなお鈴のほうが情に篤いんじゃないないかなぁと思わせる部分もあったりして(笑)そして、そんな音松を慕うように夜な夜な友人達が集っては飲み食いしていく。それにもブツブツ小言をいいながら、ちゃーんと肴の準備をしたりするお鈴の姿が微笑ましかった。良い夫婦だなぁ・・・と思った。
そうそう!お鈴の作るお菜がねー。どれもこれも美味しそうで。食欲を刺激されまくって大変だったよ(笑)店の外の七輪でぐつぐつと煮付けたり・・・って、そんな場面を想像するだけで、そこを通りかかった江戸の人々と同じように、生唾を飲み込んでしまいそうになった(笑)こんにゃくとかね、素朴な料理なのに、すっごいご馳走に思えてさぁ。私も音松の友人たちと一緒に、ご相伴に預かりたくなっちゃったよー。
人情味溢れるお話ばかりではあったんだけど、表題作の「ひょうたん」のように、ほっこり温かい気持ちになれるものばかりではないんですよね。特に「びいどろ玉簪」は、幼い子供たちの結末がとっても辛くって・・・。堪らない気持ちになりました。
そして、ラストの「貧乏徳利」には・・・もうね、泣かされました。音松と友人達との友情の深さが窺えて、そして、彼らの気持ちがとっても伝わってくるお話でした。はらはらと散りゆく桜と燃え尽きる命が交錯するようで、思わず涙腺が・・・。
この友情がね、息子たちへと受け継がれ、続編である「夜鳴きめし屋」でも続いてる様子が伺えて、この章を読んだ時には、「こっちを先に読んでおきたかったなぁ・・・。」と、続編を先に読んじゃった事を後悔したのでした。
・織部の茶碗
・ひょうたん
・そぼろ助広
・びいどろ玉簪
・招き猫
・貧乏徳利
(2012.06.18読了)
2012年06月26日
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