懸命に生きる人たちの悲喜交々を描いた7つの短編集。
こんなタイトルだけど、荻原さんの短編集だしなぁと覚悟して読んだ。・・・ら、思ってたほど暗くも重くもなく。というか、逆にちょっと切ないながらも温かい気持ちになれるような、そんなお話ばかりでした。人生、色んな事があるけど、それでも前を向いて一歩を踏み出して行こう、踏み出さなきゃ!と思えるような、そんな作品集。
まぁ、とはいえ、最初はみんな八方塞状態だったりと、問題を抱えているんですよね。大丈夫か?とか、なんとも救いがないように思えたりもして、重苦しい気分になりました。それぞれの主人公達も、最初は投げやりだったりもするんですが、それぞれが新たな出逢いがあったり、新たな発見があったりして、少しずつ変わっていくんですよね。その過程を読みながら、だんだんと気分が上がっていくような、そんな読書となりました。
好きだったのは、「今日もみんなつながっている。」と「ベンチマン」かな。
「今日も~」は、ネットやブログにはまっている人々が、実はとぉーーーっても狭い世界で繋がっていて、そのつながりが面白かった!それはちょっとご都合主義・・・と思ってしまえばそれまでなんだろうけど、ネット社会って分からないもんねー(笑)と、納得しちゃう部分も大きかった。
「ベンチマン」はリストラされたサラリーマンがその事実を家族に告げられずに、公園のベンチで一日を過ごす・・・という、最初はなんとも切なくありがちな設定だなぁと思えるお話だったんだけど、最後はジーンときました。家族もですが、見知らぬ人の優しさが沁みるお話でした。・・・美味しい!というパンも食べたくなった(笑)
逆にイマイチだったのは、タイトル作の「幸せになる百通りの方法」でしたねー。このお話が最後にきてたのもあって、読後感自体も最初はイマイチ;;;という気分になっちゃったんですよねー。で、すぐに「いやいや、面白かったって!」と自分に言い聞かせて、他の章を読み返したりもしました(笑)
他にも動物園でのお見合いパーティの様子を描いた「出逢いのジャングル」、ゲームから戦国時代にハマッタ彼女とのあれこれを描いた「歴史がいっぱい」も面白かった!特に「出逢い~」のサル山の発情期を迎えたサル達の描写には爆笑。その後も笑えるポイントが多かったんだけど、その笑いを縫うように挟まれる元彼との思い出が切なくって・・・。その絶妙なバランスも良かった。
「原発がともす灯りの下で」「俺だよ、俺。」は、人生の哀切が滲んできてちょっとしんみりしちゃったりもしたんだけど、最後は人の優しさ、そして、強さにジーン。おばあちゃんも、俺も、どっちも頑張れ!と声援を送りたくなりました。
・・・って、結局、タイトル作以外は楽しめたんだなぁ~と改めて思ったり(笑)
うん、良かった。
・原発がともす灯りの下で
・俺だよ、俺。
・今日もみんなつながっている。
・出逢いのジャングル
・ベンチマン
・歴史がいっぱい
・幸せになる百通りの方法
(2012.03.18読了)
2012年03月23日
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Weblog: 苗坊の徒然日記
Tracked: 2012-03-24 09:20
そうなんですよね、タイトル以外は本当に良かったんですよね~^^;
荻原さんの作品だから読む前にドキドキするのが分かる気がします^^;怖いというかなんというか・・・
この作品もそれぞれとてもリアルなのですがとても面白く読めました。
「ベンチマン」のお互いを想いあう気持ちが温かいなと思いました^^
タイトル作以外は良かったですよねぇ^^;
そして、おっしゃるようにどの作品もリアルでしたね。だからこそなのか、面白く読めました。「ベンチマン」は良かったですよねー!