・・・あれ?
なんだか桜庭さんにしては、ズキズキドロドロ、ドロドロドロ・・・が少なかったような。このタイトルからして覚悟して読んだんだけど、子供の名前や登場人物の名前が相変わらず突拍子もないだけで、内容的にはそれほどでもなかったなぁ・・・。実在した人物を彷彿させる物語だからでしょうか。
銀座の廃校になった小学校を買取り、そこに「楽園」と名付けた世界的ポップスターが急死。そして、娘らしき11歳の子供「傷痕」が一人残された。
タイトルからして「傷痕」という少女の物語。・・・と言いたいところだけど、そうではなかったですねぇ。彼のファン、ジャーナリスト、姉、子供の頃、彼を訴えた女性などなど、かのキング・オブ・ポップに魅入られた大人たちの物語って感じだった。もうね、最初から最後まで、あの実在の人物を彷彿させる物語で、舞台をアメリカから日本に移しただけって感じ。なんというかね、彼へのオマージュ?って印象でした。
それがツマラナカッタとは言いません。面白くって先へ先へと読ませるのはさすが桜庭さん!って感じだったし。スターに憧れた人々の、そして、そのスターに翻弄された人々の物語として読めば、とても面白かった。
最後の、傷痕の選択にも納得というかね。どうか正体を見破られる事なく、出来れば老年にさしかかるくらいまでは静かに過ごしていけますように、と願ってしまいました。
桜庭さんにしては、最後にちょっと明るい未来が垣間見えるような、そんなラスト。この感じは、強いて言えば(あくまでも、強いて言えば、だけど!)「荒野」に似てるかなぁと思いました。
ただ。ただね、結局、「傷痕」は何者だったのか。これは、明らかにされずじまいだったんですよねー。タイトルにもなってるのに。「真相はこうかなー」と予想は出来るんだけど、明確なものは何も語られなかった。
・・・ですよね?
こうやって打ってたら、ちょっと自信がなくなってきたんだけど(笑)
なんかね、その部分があって、もやもやの残る読後感になっちゃって・・・。すっきりしなーい!と叫んじゃいたい気分です。まぁ、でも、そこが”スーパースター”ってことなんでしょうか。明らかにせずに亡くなったんだから、謎はずっと謎のまま。その方がミステリアスでいいといえばいいんだけど。現実ならそれでもいいんだけどっ!小説なんだからさぁーっ。と、思わずぶつくさ言いたい気分になってしまいます;;;
(2012.02.23読了)
2012年02月27日
この記事へのトラックバック
傷痕 桜庭一樹
Excerpt: 傷痕著者:桜庭 一樹講談社(2012-01-12)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る この国が20世紀に産み落とした偉大なるポップスターがとつぜん死んだ夜、報道が世界中を黒い光のように飛び..
Weblog: 苗坊の徒然日記
Tracked: 2012-02-27 10:18
桜庭一樹/「傷痕」/講談社刊
Excerpt: 桜庭一樹さんの「傷痕」。 この国が20世紀に産み落とした偉大なるポップスターがとつぜん死んだ夜、報道が世界中を黒い光の ように飛びまわった。彼は51歳で、娘らしき、11歳の子どもが一人残され..
Weblog: ミステリ読書録
Tracked: 2012-03-14 00:04
『傷痕』/桜庭一樹 ○
Excerpt: キング・オブ・ポップがこの世を去った。彼の歌声を聴かない日はないというぐらい、世の中に浸透し、熱心な平和活動などで名を馳せた、偉大なる男が。彼は11歳になる娘(だと言われる少女)と、銀座の廃小学校を改..
Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。
Tracked: 2012-04-09 20:51
私もタイトルからどんな内容なんだろうと思ったらまさかの名前だったのでびっくりしました^^;
ドロドロした感じはなかったですが、キングオブポップを取り巻く周りの人たちの書き方がうまいなぁと思いました。
確かに傷痕の正体は謎のままでしたが^^;
こんな名前を娘につける!?と突っ込みたいところですが、桜庭作品では珍しくないところが…^^;ビックリはしましたけどね。
キング・オブ・ポップを取り巻く人々の物語に惹きつけられましたねー。なんだかんだいいながら一気読みしちゃいました(笑)
ただ、傷痕の正体が謎のままだったのが気になるところです。。。
あ~たしかに!傷痕のその後の半生って読んでみたいですねー。そっちの方が面白そうです^^;
おまけに、タイトルにもなってるのに傷痕の印象は薄いし…。ちょっと残念な読書になってしまいましたね^^;
タイトルなのに〈傷痕〉については、ほとんど語られませんでしたね~。私も気になりました。
傷痕よりも、ジャーナリストの滋田の方が、私には印象的でした。
傷痕が、彼の送れなかった普通の人生を歩めたらいいのだけれど…どうなるんでしょうね。
タイトルにつけたんだから、もう少し傷痕について語って欲しかったな~と思いましたね。お陰でもやもやが残る読書となってしまいました。
滋田は確かに印象的でしたね。好き嫌いで言えば嫌いな部類に入るんですが^^;あの情熱はどこからくるんだろうと思いました。
傷痕のその後の人生が気になりますね。でも、どうか穏やかな人生を送って欲しいと思います。