面白かった!
小劇団を主宰する大輔と瑞穂夫婦は、児童養護施設に暮らす小学5年生のひなたを週末里親として預かり、施設には内緒で特殊な人材派遣の子役として使う事に。それも、ひなたの演技力の才能を見込んでのこと。瑞穂は他人に愛を感じることができない無性愛者で、シェイクスピアに心酔する大輔とは男女間の愛情として結ばれているのではない。こんな3人が週末を家族として過ごすが・・・。
とにかく、3人が3人とも個性的(笑)なんでもかんでもシェイクスピアに繋げて、語り出すと止まらない大輔、心配する方向がちょっとずれてる心配性の瑞穂、そして、3人の中で一番、大人なんじゃないかと思えるひなた。こんな3人が週末を家族として過ごす事になる。最初は、本当にぎこちない。読んでるこっちがハラハラしちゃうくらいに、それぞれの気持ちが噛みあわないんですよね~。最初は、こんなタイトルになってるけど、本当に大丈夫なのかな?と余計な心配もしちゃいました(笑)
そして、「子役として使い物にならなければ、もう必要なくなっちゃう」と思い込んでるひなたの気持ちが胸に痛い。その為に、必死になって大輔の言葉を理解しようとし、演技しようとするひなたの姿が・・・。でも、それがね、そこまで重苦しく描いてなくて、割合すんなりというかね、するっと読めちゃうのも良かったかな。
ひなたとの交流を通して、大輔と瑞穂の気持ちが少しずつ変化していく。そして、ひなたも変わっていく。そんな3人の変化を見るのはとても心地良いものでした。
そして、帯の文章じゃないんですが、自分の気持ちがすーっと軽くなっていくのがわかった。「普通」って何だろう。世間の意見と自分の気持ちのどっちが大切だろう。私、世間の意見につられて思い込んでないかな。読みながら、ちょっと考えてみる。そうだよね、別に世間の意見に合わせなくったっていいんだよね。それよりも、自分がどうしたいかという方が大事だよね。思い込みに負けちゃいけない。・・・と、胸のうちでそっとつぶやいてみる。なんか、色んな意味で勇気を貰えた。
それにしても、瑞穂のちょっとズレた心配性っぷりにはなかなか笑えました。心配する気持ちは分かるんだけど、「そっち!?」と思わず突っ込みたくなっちゃうくらい方向性が違う。そのズレっぷりには楽しませてもらいました。でも、「無性愛者」と言いながら、ひなたや大輔のことを一生懸命、理解しようとし、心配する(方向はちょっと間違ってても/笑)瑞穂の姿は、胸に響いてくるものがありました。あ~こういう人と”連れ”になれたらいいな~と思った。
そうそう!ラスト近くで派遣の仕事で大輔とひなたが葬儀に出席した時のこと。小生意気な男の子を大輔がやり込める場面があったんですが、それがね、鮮やかでお見事だった!うわ、すごいな~と、その時初めて大輔を尊敬したし、大輔の良さが分かったような気がします(笑)本当にカッコ良かった!こういう風に守れるって素敵だな、と思えました。
読み始めた時は、ちょっと心配してたんだけど、ラストでは3人が素敵な家族、いやチームになっていて、読んでるこっちも嬉しくなった。
うふふふ。と、思わず頬を緩めながら読了。良かった!
(2012.02.14読了)
2012年02月17日
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桂望実/「週末は家族」/朝日新聞出版刊
Excerpt: 桂望実さんの「週末は家族」。 シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と、その連れ合いで他人に愛を感じることが できない無性愛者の瑞穂は、母親の育児放棄によって児童養護施設で暮らす演劇少女..
Weblog: ミステリ読書録
Tracked: 2012-04-14 00:07
でも、最後は三人でいいチームになれて良かったですね。こういう家族の形もありかなーと思えました。
あ~たしかに、最初の印象って大事ですよねぇ^^;私もそこまで良い印象は持ってなかったんですが、葬儀のシーンで見直しました。あの大輔はカッコ良かったです。
最初はどうなることかと思いましたが、最後は”家族”ではなくても、いいチームになれて良かったですよね。