なんだか随分久しぶりに読んだような気がする松尾作品。切なく優しいミステリーでした。
自称早期退職者の炭津は、実は14年前に亡くなった幽霊。彼が亡くなった事を知る家族や友人からは見えないが、彼が亡くなった事を知らない人からは普通の人と同じように見える。そんな彼が通う馴染みのバーのバーテンダー柳井は、彼が幽霊だと知りつつ、その姿も見えるという特殊な人だった。その馴染みのバーで、兼業漫画家の立石晴奈が幼かった頃、放火された実家で見つかった誰も知らない女性の写真の話を語りだすが・・・。
・・・あらすじが長い;;;けど、この特殊な設定を、これよりも短い言葉で説明できない。。。
おまけに、思いっきりネタバレしまくった感想になってしまった。
ということで、未読の方はご注意ください。
松尾さんらしく、ジーンと沁みるお話でした。設定も面白い。寝場所の確保に困るとか、駅の改札を抜ける方法とか、飲食が出来ないとか、幽霊ながら普通の人のように見えるが故の苦労も語られて、そこも面白かった。ただ、ミステリーとしてはちょっと弱いかなぁ。炭津が真相を語り出す前に、ほぼ分かってしまったんですよね。
でも、そこがこの作品の面白さを減らす事はなかったのが良かった。晴奈の語る謎、そして、今でも見つからない放火犯やその動機、炭津と晴奈の関係などなど。ある程度、予測が出来てしまっても、読後感は全く悪くない。逆に、炭津の葛藤や優しさが迫ってきてジーンとするラストになったような気がします。
もちろん、放火を正当化する気もないし、気持ちは分かるけどそれはやっちゃいけないことだとも思うんですよ。思うんだけど、炭津を責める気にはなれないんですよねぇ。最後は寂しさに胸をぎゅっと掴まれたような気分にもなっちゃいました。
この後、晴奈はどうなるんだろう・・・と思いましたが、そこも心配いらないよ、というラストになててホッ。あ~良かった、と思えるラストでした。
うん、良かった。
(2012.01.16読了)
2012年01月25日
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