良かった~~!読み終わった後、じんわりと沁みてくるお話でした。
一生に一度だけ、死者と再会させることが出来る。そんな使者(ツナグ)の元へ辿り着いた人々と、死者と生者をツナグ役目を背負うことになった少年のお話。連作短編集。
最初がいきなり突然死したアイドルに会いたいと願う女性のお話で面食らった。だって、再会したいと願う死者がアイドルって・・・。一生に一度しか死者には会えないんですよ。おまけに、会いたいと思っても死者の方がOKしないと会えない訳だし。なので、勝手に生前に深い交流のあった、もっと身近な人との再会を紡ぐ物語なんだと思ってたんですよね~。それが最初がこれですもん。読んでるこっちとしては「えぇーっ!?」って感じでした。でも、「会いたい」と願った気持ちは分かるし、会ってくれたアイドルの気持ちにはすごくジーンとしちゃって・・・。最初の章から心を鷲掴みされちゃったのでした。上手いな~辻村さん。。。
その後は、母親や、事故死した親友、失踪したまま帰らない婚約者との再会を願う人々の物語が続くんですが、章が進むごとに死者と生者をツナグ役目を背負った少年の正体が徐々に明かされていく。最初は、この少年って生者ではなく死者に近い存在なのかな~と思ってたんですけど、これは完全な勘違いだったみたいで。途中の章で、依頼者との関係が明かされた時にはビックリでした。普通に学校に通ってたりもするのかーっ!ってね(笑)
どの章も「会いたい」と願う生者の気持ちが切なくって、そして、死者と再会する場面でのやりとりもすごく胸に迫るものばかりでした。ただ、その中で一章だけ趣が違うものがありまして・・・。女子高校生が事故死した親友との再会を願う「親友の心得」。これはねー、さすが辻村さん!って思える章でした。ホント、辻村さんって女同士のこういう関係を描かせると上手いですねー。後味もそれはそれは悪い・・・。でも、死者との再会に感動だけがある訳がないよなぁ・・・と、この作品の設定からして現実的ではないっていうのに、みょーなリアリティを感じたりもしました。この少女はずっとずっと胸に重石を抱えて生きていかなきゃいけないんだろうなぁと思うと、なかなかずーんとくるものがありますね。
そして最後は、死者と生者をツナグ役割を背負った少年のお話。少年を描きながら、その前の章までに登場した死者と再会した人々の少年側から見たあれこれも挟まれていて、彼らの再会を繋ぎながら少年自身もツナグ役目や死者との再会について葛藤したり、悩んだりしてたんだなぁと思うと・・・。両親の真相は予想通りだったんですが、それでも衝撃は大きかった。それまでのどの章も深く心に響くお話でしたが、この最後の章があって心に沁みる一つの作品になってるんですよね。連作集ですが、長編小説のようでした。
いや~良かった。本当に素敵な作品でした。
・アイドルの心得
・長男の心得
・親友の心得
・待ち人の心得
・死者の心得
(2011.10.16読了)
2011年11月09日
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素晴らしかったですよね!この作品はとても好きです。
それぞれ逢いたい人の理由とか、うまいなぁと思います。
始めツナグなる人物は、天国?から来たんだと思っていました。そうしたらまさかの人間で学生で^^;びっくりしました。
彼ならきっと、ツナグの役割を果たすことができると思います。
すごく良かったですねー!
私もツナグは天国とかそんなところからきたんだと思ってたんですよね~^^;そしたら高校生でビックリでしたよね!でも、彼ならツナグの役割をちゃんとやれそうですよね。…ということで、是非、続編が読んでみたいです。