大正から昭和にかけて北海道開拓民の娘として生きたとわの物語。上巻ではとわの少女時代が描かれていましたが、この下巻は娘時代からの半生を描く。
奉公先の小樽の大店の窮状により知床に戻ったとわ。そこで、かつて家族を救ってくれたアイヌの青年と再会し、恋が芽生えるが・・・。
読んでるこちらが、「どうして、こんなに苦労ばかり・・・」と思わず嘆いてしまいそうになるとわの人生。少しでも、ほんの少しでも自分の思い通りに生きられていたら・・・と、そんなことを思わずにはいられませんでした。
初めての恋は、最初から「これはどうにもならない恋になるんだろうなぁ」と破局が見えてしまってはいたんですが、ここまで辛く切ない終わりをするとは思いもせず・・・。せめて、最後の別れくらいはさせてあげたかった。そして、再び再会した二人。三吉が戦争に行かない為に取ったという行動がどうもシックリこなくって・・・。彼がそんな姑息なことをして兵役を免れようとするとは思えなかったんですよねぇ。まぁ、彼が落ちぶれてたからこそ、とわは過去を振り捨て、また強く生きられたんだろうとは思うんだけど。物語には必然だったのかもしれませんが、どうしても違和感が拭えませんでした。
結婚してからも、なかなか働かない夫、そんな夫が戦争に行き、その最中には次男の死と苦労続きのとわだったのに、それを受け入れ、必死に生きていく。そんな姿を読んでいて、清々しいとか、優しい気持ちとかにはなれないんですが、何かずーんと胸に、お腹に、響くものがありました。
この小説では半生が描かれているとわの残りの人生は、どんなものだったんでしょう。それまでの苦労が帳消しになるようなとは言わないけれど、どうか、少しは穏やかな日々が待っていますようにと、そう願わずにはいられません。
(2011.01.25読了)
2011年02月01日
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Weblog: <花>の本と映画の感想
Tracked: 2011-02-07 22:44
あまりに苦労続きだから、三吉の現実を受け入れるのが、かわいそうな気がしました。
私も思いました!初恋の相手のことは良い思い出のままにしておいて欲しかったですよね。三吉のあんな姿を見せられたとわがかわいそうでした。