2011年01月28日

伏 贋作・里見八犬伝(桜庭一樹)

滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」をベースに紡がれる桜庭版里見八犬伝。

原作は読んでないんですが、その昔、薬師丸ひろ子さんと真田博之さんの映画は見ました(笑)あ、そうそう!その時に出版されたノベライズ本かな、それは読んだな~。たしか「新里見八犬伝」とかなんとかいうタイトルだったと思うんだけど。うわ、懐かしー。てか、歳がばれる(笑)

手にした最初はその分厚さに慄いたものの、読み始めるとまぁ~面白くって!夢中で読みました。途中に挟まれる、馬琴の息子という冥土が書いた作中作「贋作・里見八犬伝」もこれまた面白くって、あれよあれよという間に読了。一気読みでした。

本当に面白かったんだけど、でも、なんだか「桜庭作品」を読んでるという気持ちは薄かったんですよね。途中で、これって本当に桜庭さんが書いたんだよね?と思わず確認したくなっちゃったくらい(笑)桜庭色が薄かったような・・・。そういう意味では、ちょっとびみょーな感じかな。あ、でも、本当に面白かったんですよ!だから、作品的には大満足なんです。でも、桜庭作品だと思うとなんだか・・・ね。


祖父の死から、江戸の兄の元へ出てきた猟師の浜路は兄と一緒に犬人間「伏」を狩り始める。そこで出会った「伏」達や彼らを追いかける滝沢馬琴の息子、冥土らから彼らのルーツの話を聞き・・・。

元々のベースは馬琴の八犬伝なんですが、それを上手く桜庭作品らしい八犬伝に仕上げているな~という印象。先にも述べましたが、特に作中作の「贋作・里見八犬伝」がとっても良かった。伏姫と犬の八房との話はもちろんですが、弟の鈍色との話は、まさに桜庭さんならでは!って感じでした。ただ、天守閣に幽閉されている藍姫でしたか、彼女についてもうちょっと触れられていれば良かったのになぁとは思いましたけど。

追いかける浜路と逃げる伏達。両者に間にいつしか生れる絆のようなもの。読みながら、もしかしてこの二人は気持ちが通い合って・・・なんて想像が膨らんでたんですが、それはなかったですねぇ。実はちょっと期待したんだけどなぁ(笑)

そういえば、親兵衛はその後どうなったんでしょうねぇ。結構、主要キャラ扱いだったような気がするんですが、あれっきり全く触れられてなくって・・・。藍姫といい、いつの間にやら忘れられてしまったようで、すっごーーく気になります。

そして、この作品のもう一つの楽しみだったのが、表紙&挿絵が鴻池朋子さんだったってこと。数年前に彼女の展示会に行ったんですが、その時、その作品達の醸し出す雰囲気に一目でやられちゃって・・・。禍々しさ、薄気味悪さ、見ていて気持ちが悪くなるような不気味さなどなど、そういうことを感じる作品が多かったんだけど、そこにすごーく惹かれてしまったのでした。特に「アースベイビー」という作品のインパクトは凄かった!それを新聞記事で目にした途端、惹き付けられて。車で数時間かけて観に行った展示会だったんですが、これ1作品だけでも見応えがありました。

で、桜庭作品に鴻池さんのイラストって、想像したらとてもシックリきんですよね。なので、すっごく楽しみにしていたんですが、本を手にして「・・・あれ?」って感じでして。なんか、インパクトが弱い・・・ような;;;読み始めると、挿絵もなんだかシックリこない感じだし・・・;;;まぁ、これは作品集じゃなくて、あくまでも「小説の添え物」としての位置付けですからね。小説よりもインパクトが強かったらいけないんだろうけど、でも、かなり期待してただけにガッカリ度も大きかった。なんか残念。

と、小説とは違うところでガッカリ;;;しちゃった部分もあったんですが、小説の方はもちろん面白かったので良し!満足。でも、桜庭色がちょっと薄かったのが・・・あれ?(笑)



(2011.01.22読了)



伏 贋作・里見八犬伝
文藝春秋
桜庭 一樹

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ラベル:読書 著者(さ)
posted by すずな at 05:20| Comment(6) | TrackBack(4) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは^^
確かに桜庭色は少なめでしたね。
私は桜庭さんらしさをあまり気にせずに^^;読みました。
私は南総里見八犬伝を全く知らなかったので、先入観なく読めたのもよかったのかなと思いました。
まあ、原作とは違う一つの物語になっていると思いますが^^;
Posted by 苗坊 at 2011年01月28日 23:30
>苗坊さん
私も面白かったんですよ!面白かったんですけど、桜庭色は少なかったなぁ…と^^;でも、ホントに面白かったんですよ~!←しつこい(笑)
なんだかんだいいつつ、私も原作は読んでないんですよね^^;読んでみようかな、とチラッと思ったんですが、それよりも先に積読本の山を片付けねば!なのです;;;
Posted by すずな at 2011年01月31日 12:48
記事にいちいち同感です~。私も、面白かったんだけど、どうも桜庭さんって思って読むと、奇抜さや突き抜けた感が足りなかったかなぁ、とちょっと物足りなさもあったんですよね。
あのイラストの方は有名な方なんですね。私にはどうもはまっているように思えず違和感があって、あのイラストだったらなくても良かったかなぁと思ってしまいました・・・^^;
Posted by べる at 2011年02月01日 08:35
>べるさん
べるさんもそうでしたかー!面白かったんですけど、桜庭作品として読むとちょっと物足りなかったですよね。そう、突き抜けた感が足りなかったような。
あ、鴻池さんが有名な方かどうかはわかりませんが(展示会をやるくらいだからそれなりには有名なんでしょうけど^^;)、私は好きなんですよー。でも、私もこの作品にはどうも合ってないような気がしました。表紙とか挿絵を見てガッカリしましたもん。なので、べるさんのお気持ち、分かりますよー。
Posted by すずな at 2011年02月03日 12:45
すずなさん、こんばんは(^^)。
確かに、物語の勢いは良かったけど、今までの桜庭作品の根底に流れていた「少女であることの生き辛さ」的なモノがなかったですね。浜路は元気で健気な猟師少女でしたが、狂おしいまでの生き辛さとは無縁のような気がしますもんね(^_^;)。
この続編は出るんでしょうか?気になります。
Posted by 水無月・R at 2011年08月11日 22:46
>水無月・Rさん
今までの桜庭作品とはちょっと趣というか、雰囲気が違った作品でしたね~。面白かったんですけどねぇ…。←しつこい(笑)
続編ですか…どうでしょうね。でも、続編もありそうなラストではありましたねー。
Posted by すずな at 2011年08月12日 12:50
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