2010年12月19日

獣の奏者 外伝 刹那(上橋菜穂子)

これよ、これっ!このお話が読みたかったのよーぅ!と拍手喝采を送りたくなるような外伝。図書館の予約に出遅れて、ようやく読めました。

本編で語られなかった、エリンとイアルの同棲時代、エサルの若き日々、そして、外伝のおまけのようなジェシの幼い日のちょっとしたエピソード。どのお話も、本編を貪るように読んで感情を揺さぶられた私にとっては堪らないお話でした。

エリンとイアルの同棲時代を描いた「刹那」は、珍しくイアルの視点で描かれている。だからこそ、二人の想いが切々と伝わってきてグッと胸に迫りました。惹かれずにはいられなかった二人ではあっても、その二人が結ばれるまでには、どれほどの葛藤があったことか・・・。そんな二人の想いに思わず涙腺が緩んでしまって、何度も涙してしまいました。本編で、二人がその後、どんな人生を歩んだかを知っているから特に・・・。

そして、エサルの若かりし頃の苦い恋の思い出を描いた「秘め事」。そうだ、エサルにだってこんな日々があったんだよね・・・と、始めて気付かされたような。・・・ごめん、エサル;;;と、読みながら心の中で謝罪(笑)辛い思いを乗り越え、その後の生き方を決意したエサルにある意味、圧倒されました。

最後のジェシの乳離れの様子を描いた「はじめての…」は、それまでの2編のように切なさで胸を掴まれるような緊張感から解き放たれるような、ニッコリと微笑めるお話でした。エリンが子育てに悩む姿と、イアルの的確な助言。二人がちゃんと”お母さん”と”お父さん”をしてる姿、初めての子育てに右往左往してる姿を垣間見れて、なんだか嬉しくなりました。


あぁ・・・満足。大満足。

でもね、これを読んだら、本編をもう一度、読み返したくなっちゃいましたよ(笑)


そうそう。上橋さんのあとがきに、ちょっとドキッとさせられた。
『ある作品になにかが足りないと見えたとき、それが「手抜き」であるか「効果」であるか、見抜ける目をわたしは持っているだろうかと思って、恐くなったのでした。』(p327 あとがきより)
・・・私は持っているのだろうか。いや、持ってないような気がする。だって、「もうちょっと描いて欲しかったなぁ」って感想を、よーーく呟いてるような気がするんだよなぁ;;;「手抜きと効果」をきちんと見分ける、読み取れる力を持てるようにならなくちゃ、と強く思いました。



・刹那
・秘め事
・はじめての…


(2010.12.05読了)



獣の奏者 外伝 刹那
講談社
上橋 菜穂子

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ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 06:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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