短編集。
前作で「あれあれ?」と思ったんですが、この短編集は私の大好きな恒川ワールドを満喫できました。良かった~!
前作がイマイチだったので、ちょっとドキドキしながら読み始めました。最初の短編は正直、うーーん;;;だったんですが、それ以外はまさに「恒川ワールドっ!」って感じでして。ファンタジーのような和風ホラー。ちょっと不安定で不穏でぞぞぞーっと鳥肌が立つような。それでいて、どこかしら哀しく切なく、そして優しくもあり、ちょっぴり温かさも感じるような・・・。あと、なんとはなしに懐かしい。なんていうんでしょうね、なんだか懐かしいものに再会した、そんな印象も受けます。
それぞれの感想をちょこっと。ちょっとネタバレ気味かも。未読の方はご注意を。
・風を放つ
なんだかイマイチ。最初がこれだったので、これは前作同様、残念な読書になるのかなと、ちょっと不安になりました。結局、マミさんの能力は本物だったのか・・・。なんだかそこら辺りがびみょーで。最後に主人公が電話をかけてれば、そして・・・だったら、私的評価は上がっただろうと思います。・・・って、なんだかエラソウですが;;;
・迷走のオルネラ
こういう復讐もあるのか!というか、これこそがまさに「復讐」なのかもしれないなーと思った。上手くいえないけれど、この文章がとか、このお話がとかじゃなく、この「復讐方法」を考えついた恒川さんが凄い、と思った。唸らされた。
・夜行の冬
もうね、これは堪らない!大好き!恒川ワールド全開って感じ。
冒頭の「少年時代の冬の真夜中、ずっと離れたところにいる何者かの気配を、布団の中で感じたことが幾度かある。」(p104)で、「キタキタ!キタよーっ!」と叫び出したくなった。・・・大袈裟(笑)いや、本当にね、こいうの大好き。おまけに、この文章には「うんうん。これ、私も感じた事ある。わかる、わかるよー!」と共感。子どもの頃、こういう経験をしたことって、誰もがあるんじゃないでしょうか。・・・私だけ?
・鸚鵡幻想曲
なんだか、ちょっと三崎さんを感じさせられるようなお話だなーと思ったんですが。こんな設定をよくも思いつくなーと思うし、これって、ホントにそんなものが存在しそうじゃないですか。リアリティがあった。まぁ、虫の集合体ってのは想像すると気持ち悪いけど;;;でも、鸚鵡の集合体っていうのはね、あのラストとも相まって「いいかなー」と思えました。想像しても気持ち悪くない(笑)人間に恋して、また集合体になるっていう、あのラストがすごく良かった。
・ゴロンド
うん、これも好き。お話のラストがこの短編集のタイトルに繋がっているという、構成も好き。そうきたかー!と唸っちゃった。実は、今までの恒川作品と装丁も違ってて、「あれ?」と思ったんだけど、このお話だからこその装丁だったのかなーと思った。遥か大昔に想いを馳せつつ読了。なんというかね、ロマンを感じる作品でした。
・風を放つ
・迷走のオルネラ
・夜行の冬
・鸚鵡幻想曲
・ゴロンド
(2010.11.16読了)
2010年11月23日
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恒川光太郎/「竜が最後に帰る場所」/講談社刊
Excerpt: 恒川光太郎さんの「竜が最後に帰る場所」。 恒川光太郎が五つの物語で世界を変える―。 風を、迷いを、闇夜を、鳥を。著者はわずか五編 の物語で、世界の全部を解放してしまった――。静謐な筆..
Weblog: ミステリ読書録
Tracked: 2010-11-26 07:43
恒川光太郎「竜が最後に帰る場所」感想
Excerpt: 何と言っても、4つめの「鸚鵡幻想曲」が素晴らしいですね!!
Weblog: ポコアポコヤ
Tracked: 2010-12-03 16:34
『竜が最後に帰る場所』/恒川光太郎 ○
Excerpt: ふと気が付くと、今ここと違う世界にいるのかもしれないという、ひたひたと忍び寄る怖さと共存する、郷愁。 物悲しさを孕んだ和製ホラーといえば、恒川光太郎さんである。 前作『南の子供が夜いくところ』では、舞..
Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。
Tracked: 2011-07-26 21:03
読み始めるまでは不安でしたが、恒川ワールド全開で良かったですよね~!
真ん中の3作は特に恒川色が強くって良かったですね。私は3作目が一番好きでした~。
装幀は今までと雰囲気が変わってて「あれ?」と思ったんですが、これはこれで良かったですね。
「鸚鵡幻想曲」のラストがよかったですよね~。ほっとする感じで。
集合体が解放される瞬間って、見てたら爽快さとおぞましさとが綯い交ぜになりそうですね(^_^;)。自分の身の回りに、そんなものがひそかにあるとしたら、ホント怖いです~(笑)。
5編の物語の順番も良かったです。現実から、だんだんと幻想に傾き、そしていつしか現実は遥か遠く、という感じで。
恒川ワールド、堪能しました♪
「鸚鵡幻想曲」は良かったですねー!確かに集合体が解放される瞬間って想像すると複雑かも^^;身の回りにホントにあったら…と考えると怖いですよねー。
順番はおっしゃる通りですね!改めて見返して、なるほど!と思いました。