2010年11月05日

月と蟹(道尾秀介)

面白かった!すごぉーーく面白くって読み始めたら途中で止められ無くって一気読みでした。夢中で読んだ。

・・・でも、ちょっと残念というかなんというか、ね。ホントに面白かったので、ここで「でも」って付けること自体がおかしいんだけどさぁ。でもね、やっぱり「でも」って言いたいんだよーっ。複雑なファン心理ってやつでしょうか。

父を亡くし母親と祖父と暮らす小学5年生の慎一。父親に虐待されてるらしい春也。そんな二人の子どもが「ヤドカリ」を神様に見立てて儀式を始める。最初は「お金が欲しい」など他愛の無いお願いだったのに、鬱屈する気持ちを抱えた子供たちの願いはだんだんとエスカレートしていき、そしてとうとう・・・。

「あぁ、道尾さんだなぁ・・・」と思える作品でした。不安定で繊細な子供たちの心理が淡々と語られ、不穏な空気が充満していく。慎一と春也に後から加わった紅一点の鳴海。この3人の関係が複雑で、それ故に子ども達はそれぞれ鬱屈を抱えていく・・・。読んでてドキドキが止まらない。いや増す緊張感。呼吸音すらたてられない程の、ピーンと張り詰めた空気。思わず、息を詰めての読書となりました。いや~~この緊迫感が堪りませんね。でも、読了後はグッタリと疲れちゃうんだけど(笑)

おじいちゃんの「お前、あんまし腹ん中で、妙なもん育てんなよ」という言葉が印象的。長い人生を生きてきた重みみたいなものを感じると同時に、孫に対する温かく厳しく、そして愛情溢れる眼差しを感じられました。ただ、その言葉がちょっと切なかったりもするんだけど・・・。

道尾作品らしく、全体的に暗く、救いの無い、やるせない、そんな作品ではあったんですが、最後はまだ少し希望というかね、未来が見えるような作品であったと思います。他作品のように、「この救いの無さをどうすればーっ!?」と叫びだしたくなるような、そんなラストでなかったことにホッとしました。

でも!でもですよ。ミステリではないんですよ。道尾作品ならではの「くぅーーーっ、ヤラレターーーっ!!」と叫んじゃうようなどんでん返しは全くない。面白くなかった訳ではないんだけど、著者にまんまと騙されたっ!掌の上で転がされちゃったよーっ!なんていう、悔しさ半分嬉しさ半分な気持ちを味わえなかったのはちょっと残念でした。次作はそんな「まんまと騙される」作品を期待したいなぁ・・・。



(2010.10.26読了)



月と蟹
文藝春秋
道尾 秀介

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ラベル:読書 著者(ま)
posted by すずな at 05:41| Comment(4) | TrackBack(4) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読ませる吸引力はさすがだったのですが、鬱屈した主人公の内面描写にはちょっと辟易しました。ヤドカリのシーンも気持ち悪かったし・・・。
道尾さんだけに、ラストの人影の部分ではいろいろと深読みしたくなってしまいました(苦笑)。でも、やっぱり派手などんでん返しのミステリが読みたいですよね。
Posted by べる at 2010年11月06日 00:40
>べるさん
そうそう。あのヤドカリのシーンは気持ち悪かったですよねぇ;;;それでも、つい引き込まれて面白く読めたんですけどね^^;
ラストの人影…私はサラリと流してしまったんですが、もっと深読みするべきだったのかなぁ;;;とべるさんのレビューを読んで思いました。
面白く読めた本作でしたが、やっぱり道尾さんのミステリが読みたいですよね~!
Posted by すずな at 2010年11月11日 12:39
小学生の屈折した思いが、うまく描かれていましたね。
こういう、文芸色の濃い作品もいいけれど、やはり、だまされたって思える作品が恋しいです。
Posted by 花 at 2010年11月13日 14:56
>花さん
小学生たちの心理描写が上手くって、暗く重い印象が多いのについつい惹き込まれて読んでしまいましたね。
これはこれで良かったと思うんですが、大どんでん返しな作品も読みたいですよねーっ!
Posted by すずな at 2010年11月15日 12:54
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