2010年09月19日

あんじゅう 三島屋変調百物語事続(宮部みゆき)

おそろし」に続くシリーズ2作目。

やーっぱり面白いっ!もうね、夢中で読んだ。一気読み。

三島屋の主人夫婦の姪ながらも、事情があって行儀見習として働くおちか。彼女が、三島屋の一間で聞く不思議で奇怪な物語の数々。1作目の「おそろし」はタイトル通り、めちゃめちゃ恐かったんですよね。ぞわぞわして背筋に冷たいモノがつぅーーっと流れるような、そんなお話でした。もちろん、この2作目も不思議で奇怪なお話達ではあったんだけど、夜中に「トイレにいけなーい!」と喚きたくなるような恐さではなかった。ぞくぞくっとするものもあったけど、最後はほっこりと微笑めるようなのもや、ホロリと涙腺が緩んじゃうような、そんなお話も交じった4編。

「逃げ水」はお旱さんとお旱さんに憑かれてしまった少年のお話。切ない物語ながら、可愛くって憎めないキャラのお旱さんにクスリと笑わさせる。少年の優しい気持ちと、その少年を丸ごと受け止めるおちかや三島屋の面々。周囲の人によって、こうも変わるもんなんだと気付かされる。チクリと自分の良心が痛む。自分は関わった人達にどんな風に接しているかな。そんなことを思って反省してみたり。

「藪から千本」は、当時、忌み嫌われた双子のお話。結局、一番怖いのは人間なんだよな、と。まぁ、そんなことを改めて感じる。双子の姉妹。嫁姑。兄弟とその嫁同士。色んな人間模様が悲劇を作る。このお話でおちかにお勝という新たな仲間?が加わる。

「暗獣」は、主を失った家が淋しさから創り出してしまった人ならぬもののお話。タイトル作になってるだけあって、一番、印象深くって、一番好きなお話でした。最初は「くろすけ」の可愛さにほっこりと和ませてもらっていたのに、だんだんと切なくなっていって・・・。「くろすけ」にすっかり心を奪われてただけに、悲しいラストに思わず涙。

「吼える仏」は・・・もうね、これは怖い。人ならぬものへの恐さではなく、まさに人間への恐怖。集団心理の恐ろしさとか、残酷さをまざまざと見せ付けられた。人ってここまで残酷になれるものなのかと思う反面、それが人だよなと、みょーに納得している自分もいたりして。そんな風に思える自分にも少しばかりの恐さを感じたり・・・。

どのお話も、最後はおちかや三島屋の人々の優しさや温かさに救われる。ホッと出来る作品でした。

そうそう!この作品はページを開く毎に南伸坊さんのイラストが掲載されている。そのイラストの可愛らしいことといったら!ページを繰るのが楽しかった。この作品は、読売新聞に連載されたようですが、その時の挿絵なんでしょうか。とっても良かった。

1作目を読んだ時から続編希望!だったので、こうして2作目が読めてとっても嬉しい。少しずつ、おちかも変わっていってるようでそれも嬉しい。あ~早く続編が出ないかなぁ・・・。2作目を読んだばっかりだっていうのに、3作目がとっても待ち遠しい私です(笑)



・序    変わり百物語
・第一話 逃げ水
・第二話 藪から千本
・第三話 暗獣
・第四話 吼える仏
・     変調百物語事続 



(2010.09.14読了)



*****
追記というかなんというか・・・。
この記事が読書感想記事の1000記事目でした。学生時代、読書感想文が大の苦手だった私がよくもこんなに感想が書けたもんだと自分でもビックリです。1000という数字はこのブログを始めた時からの目標でもあったので、こんなコメントを残しちゃうくらいに嬉しかったり。10月で4周年を迎えるということもあって、そういう意味でも嬉しい。あとね、「思ったまま正直な感想を書く」をモットーにしているので、時にかなり辛口感想もある中、区切りの記事が絶賛記事だったことも嬉しいです(笑)
ここまで続けてこれたのは、こんな駄文にTBやコメントを下さる方々、目を通してくださる方々いらっしゃったからこそです。本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いします。




あんじゅう―三島屋変調百物語事続
中央公論新社
宮部 みゆき

Amazonアソシエイト by あんじゅう―三島屋変調百物語事続 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

ラベル:読書 著者(ま)
posted by すずな at 14:50| Comment(4) | TrackBack(3) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは^^
面白かったですね~^^私も絶賛です。
毎ページに載っているイラストが本当に可愛かったです。
お話もどれも面白かったのですが、結論としては生身の人間の方が怖いなと言う事でしたね^^;

そしてとっても遅くなりましたが1000記事ですか!それは凄い。1000冊以上読まれてるって事ですもんね~私も負けずに頑張ります^^
引き続きよろしくお願いしますね♪
Posted by 苗坊 at 2010年12月13日 13:55
>苗坊さん
ホントに面白かったですよねーっ!!おまけにイラストも可愛らしくって、ページを繰るのが楽しみでした♪
面白かったんですが、生身の人間が一番怖いな~;;;と改めて思ってしまうお話でもありましたね。

そして、追記にまでコメントありがとうございます!!お互い、これからも楽しい読書が出来ればいいですね~♪こちらこそ、よろしくお願いしますm(__)m
Posted by すずな at 2010年12月14日 12:50
すずなさん おはようございます
私の所ではちょっとネガティブな書感だったので
TB遠慮してました 笑
でもやっぱり宮部みゆきさん、
何のかんの言いながら、読ませますね!!!
Posted by yori at 2011年07月23日 10:58
>yoriさん
あら、そうだったんですね~。色んな方の感想が読めるのが楽しみなので、ネガティブな感想でも全く気にしませーん。これからは、お気遣いなくどーぞ!
ホント、読ませるところはさすが宮部さんですね~。
Posted by すずな at 2011年07月25日 12:38
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック

あんじゅう 宮部みゆき
Excerpt: あんじゅう―三島屋変調百物語事続著者:宮部 みゆき中央公論新社(2010-07)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る さあ、おはなしを続けましょう。三島屋の行儀見習い、おちかのもとにやっ ..
Weblog: 苗坊の徒然日記
Tracked: 2010-12-13 13:56

「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」宮部みゆき
Excerpt: あんじゅう―三島屋変調百物語事続(2010/07)宮部 みゆき商品詳細を見る 袋物屋の三島屋は、江戸は神田、筋違御門先の三島町の一角にある。主人の伊兵衛が振り売りから一代で興した店だ。店舗こそ小ぶりな..
Weblog: しんちゃんの買い物帳
Tracked: 2010-12-13 22:02

不安定な気持ち
Excerpt: 時代物である。 百物語である。 しかも書いているのは宮部みゆき女史であり、 なお且つ、続き物の第二段なのである。 これがつまらないはずがないのである。 宮部みゆきさんの ...
Weblog: 活字の砂漠で溺れたい
Tracked: 2011-07-23 10:55