2009年09月23日

オイアウエ漂流記(荻原浩)

タイトル、装丁から想像した通りのお話。って、これだけで終わらせたらあんまりかな~(笑)

接待出張で乗り合わせたプロペラ機が熱帯低気圧に巻き込まれ遭難。総勢10名の乗客が流れ着いたのは小さな無人島だった。リゾート会社社員とその上司にスポンサー企業の御曹司。新婚カップルに小学生とそのおじいちゃん。おまけに怪しいガイジンさん。と、犬。コンビニも自動販売機も無い島での生活が始まった・・・。

いや~楽しかった。リゾート会社社員、新婚カップルの奥さん、おじいちゃんと参加した小学生の男子の3人が交互に語る無人島での日々。荻原ワールド全開って感じで、無人島に流れ着いてしまった悲壮感はほとんど感じる事は無く、人間の滑稽さが全編に渡って描かれているって感じでした。

なんたって、無人島だっていうのに、会社での序列は変わらない。上司は意味も無く威張り散らすし、下っ端はやっぱり下っ端でこき使われてしまうし、スポンサー企業にはヘコヘコするし・・・。サラリーマンの悲しいサガが余すところ無く描かれているんですよねぇ。おまけに新婚カップルの奥さんは、「この結婚は間違いだったんじゃないのか・・・」と考え始めたりもするんだけど、いかんせん小さな無人島暮らし。離れたくても離れられないし、徐々に意外な夫の姿も見えてきたりして、その度に見直したり、いや、やっぱり・・・と迷ったりもする。

この無人島生活って1週間くらいで終わるのかと思ってたんですが、1週間は瞬く間に過ぎちゃって。1ヶ月、2ヶ月・・・と月日が過ぎていくのが意外でした。最初はなかなか慣れなかった無人島生活に、だんだんと慣れていく10人。と、1匹。火の確保や食料調達に悪戦苦闘しながらも、だんだんとそのワザを磨いていく。何を置いてもまずは食料!生きる為には食べなければならない。極限状態での食料確保には様々な思いや葛藤があって、それがシッカリ描かれているんですよね。全編に渡ってユーモアに溢れてはいるものの、ただの「ドタバタ無人島生活記」ではなく、読み応えのある面白い小説でとなっているところが、とーーっても私好みでした。

今日のことだけを考えていたのが、無人島生活が長くなるにつれ先のことまで考えるようになる。・・・あ~れ~?これって、最後はどうなるんだろ?と、残り僅かになった未読ページを確かめて不安になりました。このまま無人島で楽しく暮らしましたとさ。とかで終わっちゃいそうな雰囲気だよなぁ・・・と思ったところで、イキナリの展開。え?えーっ?なラストに、ちょっと脱力。そうきたかーっ、と思わず笑っちゃいましたよ。

でもね、それはあんまりと言えばあんまりな終わり方のような・・・と思うのは私の我侭でしょうか~?出来る事なら、もうちょっと先まで彼らを描いて欲しかったよなぁ、と思わずにはいられません。確かに「漂流記」としてはこれで終わりでいいんだろうけど、その後の彼らを一文でいいから描いて欲しかったなぁ・・・。うー、な~んか物足りないんだよなぁ。。。



オイアウエ漂流記
新潮社
荻原 浩

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ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 05:31| Comment(4) | TrackBack(6) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
漂流生活のてんやわんや振りが楽しかったですね。いろんな視点から描かれているのも、面白かったです。男の子にほのぼのしたり、新婚カップルの奥さんの強かさにうへぇとなったり。
Posted by エビノート at 2009年11月11日 19:58
>エビノートさん
無人島に流れ着いてしまった悲壮感はほとんどなく、ユーモアに溢れた漂流生活は読んでいて楽しかったですよね~。
そうそう。一人の視点だけでなく、何人もの視点で描かれてるのも面白かったですね♪
Posted by すずな at 2009年11月15日 07:46
同じく!
終わりをもうチョット工夫して欲しかったです。
面白かったけど(^^ゞ
Posted by じゅずじ at 2009年12月15日 11:14
>じゅずじさん
面白かっただけに、終わりがちょっと物足りなかったですねぇ;;;
Posted by すずな at 2009年12月20日 08:08
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