著者のデビュー作である「桃山ビート・トライブ」(小説すばる新人賞受賞作)を読んでから、次作をとっても楽しみに待ってました。今作は壱岐と博多を舞台に二度の元冠襲来に翻弄された3人の男女を描いた青春群像劇。
いや~期待を裏切らない面白さでした。2段組も、その厚さも、全く気にならないくらい夢中で読みました。爽やかな青春劇だと思っていたけれど、そうではなく、哀しく切なく壮絶な闘いの日々が描かれ、戦に翻弄された人々の想いが胸にずんずんと響いてくるようなお話でした。そのくせ、読後感はそんなに悪いものではない。どんなことがあっても、希望を捨てず未来に向かって歩んでいくという人間のサガ、逞しさを感じられるラストだったのが良かったのかな。
二度の元寇襲来で、壱岐がどんな悲惨な戦場となったのか。 歴史の教科書でさらりと触れただけの知識では、到底分からなかった惨劇が詳細に描かれていて、かなりの衝撃を受けました。「”神風”によって日本は救われた。」というのは、戦わずして勝った訳ではなく、戦って戦って戦って、もう終わりだ・・・という最後のところでなんとか救われた、博多への上陸だけはなんとか免れた、ということだったんですね。知らないという事は恐い事だとしみじみと、本当にしみじみと思いました。自分の生まれ育った国、ましてや九州で起こったことなのに。知らないことが本当に多いよなぁ・・・と改めて感じたのでした。
壱岐で出会った3人の男女。元寇によって思ってもみなかった人生を歩む事になってしまう彼ら3人。「どうしてこうなってしまったんだろう・・・。」読んでいる私でも、そう呟きたくなるような彼らの人生。ちょっとしたことが、ドミノ倒しのように人生を狂わせていく。何が悪い訳でもないのに、どこでどうしたら違った道を歩めたんだろうか・・・と、考えても仕方の無い事だと分かっていても、ついつい考えたくなってしまいます。それは、この男女だけではなく、自分自身への問いかけだったのかもしれません・・・。
それにしても、この著者さんは2作目にしてこの面白さ!今後が本当に楽しみです~。
2009年09月20日
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連休が倍がほしかった……。
出てたんですねぇ(笑)
面白かったよー!