「街の灯」「玻璃の天」に続くベッキーさんシリーズ3作目。
昭和初期。英子お嬢様と運転手のベッキーさんこと別宮さんが、遭遇した謎を解いていくという3つの中編。
謎解きもさることながら、昭和初期の様子が生き生きと描かれていて、そちらもこのシリーズの魅力です。巻末の「参考文献」で著者が説明されてますが、ちょっとした史実を物語に織り込んであったりするのもいいです。昭和初期の空気に触れられたような気がして。その中でも、「ブッポウソウ」は印象的に使われていました。
英子お嬢様の行動力とベッキーさんの鋭い指摘はあいかわらず健在。英子お嬢様のちょっと無鉄砲な行動力には、こちらもハラハラさせられましたが(笑)でも、別宮さんがカッコよく登場してくれて、予想はしてても惚れ惚れしちゃいましたよー。
3編の中では「獅子と地下鉄」が一番、好きかな。男の子のお父さんへの想いにジーンとしました。「三越のライオン」を見る度に、このお話を思い出して微笑んでしまいそうです。
ほっとする物語の影で、時代は不穏な空気を纏い始めていきます。そんな軍部の動きを、英子お嬢様の淡い恋心と絡めて描いてあるのが、切なさを増幅させます。昭和十一年二月の雪の朝。そこにお嬢様を絡めるのか!?と、ちょっと著者に詰め寄りたいような、そんな気持ちになってしまいました。
どこかで「シリーズ最終章」という文字を見たんですが、これで終わりって言うのはなんだかちょっとねぇ・・・という感じです。何かに終止符が打たれた訳でもないし、その後の英子お嬢様が気になる!続編を書いて欲しいなぁ・・・と思わずにはいられません。
2009年05月19日
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