「な、なんですとぉーっ!?」と叫びたくなるようなラストでした。というより、「・・・なんと;;;」とガックリ膝を折って「あは。あはははは。」と乾いた笑いがこみ上げてくるようなラスト、と言ったほうがいいかな。脱力しちゃいました。真相って、得てしてそんなもんなのかもしれませんねぇ。
図書館に予約して手にした本は、待たされた分、かなりの分厚さでして。読み応えありそー。ぞくぞくしそー。ワクワクするーっ!と、すっごっくテンションを上げての読書となりました。そのテンションを徐々に落ち着かせるようなプロローグ。淡々と綴られる文章を読みながら、だんだんとM町の情景が目の前に浮かび上がってくる。この小さな町で起こった「水無月橋殺人事件」。殺されたのは東京で失踪していた男性。失踪の理由は?犯人は?
短い章が、一人称で、二人称で、三人称で、次々と語り手が変わりながら綴られ、場面がくるくると転換する。章が進むごとに、この殺人事件についての情報が小出しにされていくって感じかな。
最初は、殺人事件なのでミステリかな?と思っていたら、なんだかM町の謎とか隠された歴史とか旧家の一族とか出てきて、ホラーなのかな?と思ってたら、あれあれなんだかファンタジーみたいな感じもしてきたぞ、と思ったところで、はぃぃ!?なラスト。なんと言っていいのかわかりませんが、「恩田ワールド」がこの1作にぎゅぅぅぅぅっと詰め込まれているような作品でした。
それにしても、広げに広げた謎。読みながら、あーでもない、こーでもないと推理する楽しさ。ぞくぞくぞわぞわさせられた後に、クライマックスと言える豪雨のシーンでは、わくわくさせられてとっても楽しませてもらいました。豪雨時のM町の情景を眺めてみたい!と心から願ってみたり。
でも。と、そこでフト冷静になる。M町の謎は分かったけれど、これが彼の殺人とどう繋がるの?彼はこの豪雨で起こった現象に何か一役買ってるの??
最後の最後の、それまでと同じように短い章で、「水無月橋殺人事件」の真相が語られる。膨大なページを使って広げに広げられた謎が、ぷしゅぅぅぅっという音が本当に聴こえたよね?と錯覚するくらい、小さく小さく収められるんだもん。あれはそういうことっ!?え?そ、それはそうなるのぉっ!?えぇっ、それはあんまりにも・・・;;;と、ブツブツ、ブツブツいちいち反応してる私。端から見たら怪しい人だったかも(笑)で。もう、笑うしかない。そんなんありっ!?って真相に脱力。
と、脱力しちゃうようなラストでしたが、その前の、一人の人間から、だんだんと町を俯瞰するように広がっていく情景は、とっても爽快でした。
うー。これはネタバレしちゃうと面白くないんで、あんまり詳しく語れないのが辛いところ。・・・って、充分にネタバレ気味な気もしますけど。
でも、ネタバレ覚悟で最後にこれだけは叫ばせてっ!(笑)
駅のステンドグラスの意味は結局、なんだったんでしょうか。つーか。「はさみ」は何だったのーっ!!ステンドグラス以外でも、めっちゃ思わせぶりな小道具として登場してたのに、結局のところ”放置”だったような・・・。それとも私が何か重要な記述を読み飛ばしたのかな?
脱力しちゃったラストでしたが、ある意味、唸らされたラストでもありました。大きく複雑に広げた世界を、見事に、呆気ないほどに収束させる。脱力する為には、その前にそれ相応の力を入れとかないといけないんだよね。と、そんなことを思うのは、私が恩田ファンだからかもしれませんね。他の作家さんで同じことをされたら、けちょんけちょんなコメントをしちゃうような気もするなぁ(笑)
2008年10月23日
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伏線(らしきもの?)に、まんまと踊らされたような気がします~^^;沢山ありましたもんねぇ。べるさんのレビューを読んで、「そういや糸っ!!」とか叫んでおりました(笑)
ミステリというかなんというか・・・でしたが(苦笑)、真相がうやむやにされずに良かったですよね、ホントに。
恩田さんらしい作品でしたね。
本当不思議なことが沢山起こっていて先が気になって仕方ありませんでした。
本当謎だらけでしたね。そして少しずつつなげていく手腕はさすが恩田さんという感じでした。ラストのオチはあまり好きではなかったのですが、なかなか面白かったです。
次々に畳み掛けるように謎が広がっていって、次へ次へと読み進めてしまいましたね~。さすがでした。
ラストには脱力させられました^^;でも、「恩田さんだよな~」と納得しちゃったんですけどね。このオチは好き嫌いが分かれそうですね。
脱力しちゃいますよね~殺人事件の真相は(笑)
これは真相を曖昧なままに残しておいた方が良かったのかも…と思っちゃいました。そうなると、逆にもやもやもや…となっちゃうんだろうけど。
まあ、でも「集大成」というだけあってこれまでの恩田さんの作品のあれやこれやが思い浮かんで、濃縮還元された感じを楽しみました。
殺人事件の真相、曖昧なままの方が良かったかもしれませんねぇ。でも、そうなるとやっぱり「真相はっ!?」ってウダウダ言っちゃいそうですねぇ(笑)
まさに「集大成」って感じで、色んな作品の要素が入った作品でしたね。楽しめましたね~。でも、あの殺人・・・以下自粛(笑)
恩田作品は過程が面白いですよね。
どうなるどうなるっていいところでその章が終わるので、読む手が止まらなかったです。
ちょっと疑問が残った部分もありましたが^^;
堪能しました。
あ、そうそう。過程が面白かった!ですねぇ。私も先が気になって夢中で読んでしまいました。
でも、謎のままの部分がとっても気になります~^^;
色々、謎が残されたまま終わっちゃいましたよねぇ・・・(^_^;)。
「2人称」で語られる章の居心地の悪さに、「うわぁ、とにかく謎を解明しなくては」と、どんどん読み進めるうちに、いや増す不安感。
ホントに、色んなイミで不穏な物語でした(笑)。
鋏とか塔に登る儀式とかはなんだったよーですよね。まあ、お祭りとかみたいに昔は何らかの意味があったのが、時代を経て形だけが残ったって事なんでしょうけど。
あっちゃこっちゃに取り残された謎が気になりますねぇ(笑)
不穏で居心地の悪さを感じつつ、だからこそ先が気になって読んでしまう。恩田マジックに絡み取られたような感がありました。
ホント、色んな意味で不穏な作品でしたねぇ(笑)
>たまねぎさん
わざわざコメントありがとうございます!お気になさらず~。
いろいろ「どんな意味が?」と気になりますが、たしかに”お祭り”だと思えば、そういいう考え方で納得できますね~。でも、やっぱり気になる(笑)
そうなんですよねぇ。こんな真相ってどうよ?と思うんですが、何故だか「恩田さんだしなぁ~」と思えちゃったんですよね^^;