2008年07月14日

ラットマン(道尾秀介)

あるべき方向へ淡々と進む物語という印象で読んでいたら、最後にくるりと見事にひっくり返され、なぬーっ!?と驚かされました。著者のワナにまんまとひっかかってしまった;;;うぐぐぐぐっと悔しい気持ちと、ワクワクさせられた嬉しい気持ちが半々。楽しませてもらいました。途中までは「あれ。イマイチ?」と思ってたんですが、ラストで一気に面白くなりました。

タイトルの”ラットマン”というのは、認知心理学では有名なイラストなんだそう。前後のつながりで同じものがネズミと男性の顔に見える、錯覚させる。作品の中でも紹介されていて、分かってるのに、並べて描かれているのに、本当に一方はネズミに、もう一方は男性の顔に見える!えーなんでぇっ!?人間の目って当てにならないもんだよなぁ・・・ということを身をもって体験しました(笑)

この小説は、そういう人間の錯覚が事件を複雑なものにし、読者までもを欺く。過去の事故と現在の殺人事件が交錯し、より”錯覚”を強固なものにする。過去の事故の真相と、現在の殺人事件の犯人。たくさんの伏線が張られていて、それが最後の最後にパタリ、パタリとめくり返されて曝されていく。なんだか目の前でトランプの神経衰弱を見ているような気分になりました。どんどんめくられてペアが出来ていくのを、指をくわえて眺めてるだけしか出来ない悔しさ。あ、あそこにあったっ!きぃーっ、そこかっ!みたいな。特に、現在の殺人事件の犯人は、「あれ。この人ってば怪しい・・・」と思ったものの、主人公の泰然自若振りに「わ、わたしの勘違いかな;;;」と思い直したんだよねぇ。まさに「・・・くっちょーっ!」って感じ。



ラットマン
光文社
道尾 秀介

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ラベル:読書 著者(ま)
posted by すずな at 14:43| Comment(5) | TrackBack(4) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私はオセロをしていて最後の2、3手ですべてひっくり返されて負けた気分でした。まさに黒優勢で勝負は決したと思ったところを真っ白に返されました。
Posted by たまねぎ at 2008年07月16日 23:09
鼠男の症例という、フロイトの有名な症例のほうかと思ってしまいました……。
視覚は錯覚しやすく、実験のため、様々な図が考案されています。ネッカーの図形に始まり、ウサギとカモとか、老女にも若い女性にも見える図形とか、ゲシュタルト心理学で紹介されるけれども、壷と横顔とか……。面白いですよ。

面白そうな本が続々……。
Posted by 香桑 at 2008年07月17日 10:15
>たまねぎさん
あ~それそれ!まさにそんな気分でしたよねぇ。
悔しいと思いつつ、まんまと騙してくれたことに嬉しさを感じたりもしましたけど(笑)

>香桑さーん!
鼠男の症例・・・へぇ、どんなんだろ?ちょいと調べてみよう。
老女と若い女性の絵は見たことある!他にもいろいろあるんだねぇ~。

うふふふ。これ、面白かったよー♪と、悪魔の囁き★
Posted by すずな@主 at 2008年07月18日 16:29
道尾さんの作品を読むと、孫悟空になった気分です。お釈迦様の手のひらの上で翻弄されるように、知らず知らず道尾さんの術中にはまっているというパターンなんですよね。
Posted by エビノート at 2008年07月20日 17:24
>エビノートさん
孫悟空!おぉ~ホントですね~。そのお気持ち、すっごーくわかります!!
また、他の作品で掌の上で翻弄されたいと思います(笑)
Posted by すずな@主 at 2008年07月21日 09:41
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