最初は戸惑いが大きくて、なかなかこの”新世界”に入っていけなかったんだけど、読み進むうちにどんどん魅了されていって、最後はガツガツと読んでしまいました。初読み作家さんですが(たぶん)、めっちゃ私好みのお話のようです。
昭和初期を思わせるような人々の生活。それも、どうやら超能力を操る人々の集団らしい。生物もまた、様々な見知らぬ種が生存している。そこはまさに「新世界」。最初は、その世界に慣れずに「ぬぅ!?」と訳が分からなくって困ったんだけど、ある時点でそれまでの歴史というか成り立ちが語られて、そこから一気に私の頭の中でも理解が進みました。より読みやすく、分かりやすくなった。あとは、グイグイとひきつけられて一気に最後まで。上下巻だというのに、かなり分厚い上巻でしたが、それが気にならないくらい没頭して読みました。
主人公の早希が過去を語るという形で綴られるので、最初から、この”新世界”は崩壊しているのだな、何か悲劇的な出来事があったのだな、というのが分かっていて、早希の子供時代から、その悲劇に向かって進む様子が語られる。読みながら、これがどう繋がっていくのだろう、あぁ、こういうところから破綻していったんだろうな、ここからどういう風に綻びが広がって、どんな破綻を迎えるのだろうと、あれこれ想像するだけでドキドキしちゃいました。
完璧に見えても、それが続いていけば、いつかどこかから少しずつ、少しずつ、ぽたりぽたりと蛇口から水が滴り落ちるように綻んでいくものなんだろう。人が変わり、記憶が薄れ、そして環境が変わる。それにつれて、変化していくのが当然なのだ。変化しなければならないのだ。”永遠”なんてないんだ。
・・・なんてことを、感じました。今ですね、「竜馬がゆく」(司馬遼太郎)を読んでるから余計にそう感じたのかもしれないですね。
下巻も同じくらいの厚さがあるようです。どんな物語が紡がれていくのか。早希はどんな”新世界”でこの物語を語っているのか。想像しただけで、ワクワク楽しみでもあり、その前に悲劇が語られるだろうだけに、チクリと胸が痛みもします。どうか、かの子供達が、一人でも多く幸せな日々を送っていますように・・・。
**新世界より(下)