短編集。ひまわり、コスモス、椿、そして桜。四季を彩る花をモチーフに描かれる4つの季節。4人の物語。どれもが苦く、痛く、切ない。そして、そのキリキリした想いをふんわりと包む込むように優しい。豊島さんの作品を読むと、封印していた思いがどっと溢れ出す感じがする。毎回、かさぶたをピリリと剥がされるような、心がツンと刺されるような。だから、読みながら私はとっても痛い顔をしているんだろうな、と思う。それでも、豊島作品を読んでしまうのは何故なんでしょうねぇ。こういう思いを忘れるなってことなんでしょうか。
・サマバケ96
ユカちゃんに共感。私も同じような経験をしたことがあるんだよなぁ。友達を取られちゃったというか、彼氏が出来た途端、私は用無しかいっ!?って思ったこと。寂しさや苛立ち。あ~そんなこともあったよなぁ、なんて懐かしく思い出しちゃいました。
・コスモスと逃亡者
4編の中で好きな順に順番を付けるとしたらこれが最後になります。主人公の設定がちょっとね;;;でした。必要性をあまり感じられなかったんだよなぁ・・。ただ、たからの素直な飾らない言葉だからこそ、おじさんの心にモロに刺さって何かを変えられたんだろうな、とは思いました。一番伝わるのは、人を動かせるのは、飾り立てた言葉ではなく、素直にホロリと零れでた言葉なんでしょうね。そして、ありのままを受け入れること。
・椿の葉に雪の積もる音がする
一番好きな作品でした。おじいちゃんと雁子の交流が温かく、優しく、心に沁みました。雪の白さと椿の鮮やかな赤が、ぱぁっと目の前に広がっていくような。最後は、雁子と一緒に涙ぐんでしまった。
・僕と桜と五つの春
これも好き。毎年、桜が咲き誇る季節になると、「あ~私って日本人なんだなぁ」ってしみじみ思うんですよね。満開の桜を見つければ条件反射のように歓声をあげてしまうし、ぼぉーっと見惚れてしまいます。ずっと眺めてても飽きない。そんな桜のような人に出会えたら、そりゃぁ、恋をしちゃうでしょう。・・・と、そんなことを思ったのでした。
描かれた4人の主人公はみんな優しい。優しいというのは強いということ。みんな、弱いようでいて強い。その強さを少しだけ分けてもらえたような気がしました。