2008年04月19日

川の光(松浦寿輝)

読売新聞で連載された作品。新聞小説で、こういうお話って珍しいんじゃないでしょうか。大人向けというよりも、小中学生向けのような感じです。

川岸で平和に暮らしていたねずみ一家。ある日、人間たちがやってきて木を切り倒し始めた。川に蓋をする工事が始まったらしい。もうここでは暮らせない。ねずみ一家は、安心して暮らせる新しい土地を求めて旅に出ることに・・・。

・・・なんだか、どっかで読んだぞ。そんな気がして、記憶の引き出しを漁る。あれだ、あれ!「ウォーターシップダウンのウサギたち」(リチャード・アダムス)だよ。あれの日本版て感じかなぁ、きっと。随分前に読んだので詳しい内容は忘れちゃったんだけど、ウサギたちが今まで住んでいた土地を捨てて新しい棲家を求めて旅にでるお話だったんだよね。旅の途中には、様々は危険や困難が待ち受けていて、それらを何とか乗り越えて新しい土地に辿りつく・・・と。・・・まさにそんなお話でした(笑)

旅の途中で遭遇する外敵や、ドブネズミ達の帝国に立ち向かうねずみ一家のお父さんとタータとチッチ兄弟の活躍にはドキドキハラハラ。彼らを手助けしてくれるのは、本来は敵であるはずの犬のタミーやすずめ一家に猫のブルー。図書館で暮らすねずみのグレンとの交流には暖かーい気持ちになりました。鷹に襲われたところを助けてくれた子供達や、動物病院の先生、奥様の優しさにもほっこりしたり。

ねずみ一家のドキドキハラハラの冒険は、とっても楽しく面白く読めたんだけどね。その一方で、人間たちの都合で破壊される自然や棲家を追われる動物達。旅の途中に遭遇した、敵であるはずの動物たちの手助け、仲間であるはずのねずみ達の迫害には、なんだか、地球を我が物顔で支配する人間達や、同じ種族同士で争う人間たちを嘲笑しているような、そして、自嘲しているようなお話にも感じました。

そして、最後。ねずみ達に絶体絶命の危機が訪れるんだけど、そこでイキナリ著者が割り込んできたはの興醒めでした。あれでテンションが一気に下降。言いたいことはわかるけれど、アレがなくても著者の言いたいことは伝わると思うし、伝えるのがプロじゃないのかなぁ・・・。ねずみ達の物語だけにして欲しかったと思ってしまいました。面白く読めただけに、ちょっと残念です。


川の光
ラベル:読書 著者(ま)
posted by すずな at 10:53| Comment(3) | TrackBack(2) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ねずみたちが冒険に出るきっかけ、人間がその原因を作っちゃったんですよね。いろんな所で工事してる風景を見ると、そこに生きる生き物達はどうなっちゃうんだろう?と、ちょっと考えてみたり。
タータやグレンたちのその後の物語も読めるといいですね。
Posted by エビノート at 2008年04月20日 01:10
はじめまして。くじらといいます。

ボクも昨日読み終えました。
後半、著者は顔を出さないほうがよかったね。
同感です。
Posted by くじら at 2008年04月20日 09:44
>エビノートさん
ねずみ一家のハラハラドキドキの旅を楽しく読みつつ、その旅の原因は・・・と、ちょっと考えちゃった自分がいました。
便利になるのは大歓迎しちゃいますが、その為には他の動物達や自然に影響を与えてるんだということも忘れないようにしたいですね。
その後のお話、私も読みたいです!

>くじらさん
はじめまして。
TB&コメントありがとうございます!

楽しく読んでた分、著者が顔を出したところで興ざめしちゃって・・・;;;ちょっと残念でしたね。
Posted by すずな@主 at 2008年04月21日 11:56
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