2007年10月19日

サウスバウンド(奥田英朗)

面白かった!
特に後半は目が離せ無くなってしまって、見ようと思っていたTVドラマをすっ飛ばし、睡眠時間まで削って貪り読んじゃったよ~。お陰で、目はシパシパだし、すっごくねーむーいぃぃ(笑)

この本はこちらの室長に”握りこぶしに力を入れてお薦め”されちゃいました。それも、メールで直訴されちゃって(笑)そんなに面白いのか!?と、そっこー図書館に予約して読んだんだけどね。薦めたくなった気持ち、すんごぉーーく分かった!私も誰かに”握りこぶしに力を入れてお薦め”したくなるような本でした。

主人公は元過激派の父を持つ小学6年生の僕。自称フリーライターのお父さん、喫茶店を切り盛りして一家を支えるお母さん、10歳年上の姉に、小学生の妹の5人家族。
2部構成になっていて、1部は東京編。僕が子供たちの社会で闘うお話。2部は西表編。お父さん(&お母さん)が大人の社会で闘うお話。・・・って、端折りすぎかな?(笑)

元過激派ってことで、お父さんの言動がすごい。税金を納めない、国民年金を払わない、「学校には行かなくていいんだ」って子供に言ったり、修学旅行の費用が高すぎるって学校に乗り込んだり・・・。支払を迫る役所の担当者に「日本国民をやめる」なんてことまで言っちゃう。いやーすごい。うはうは笑いながら読んだけど、こんな人が身近に居たら笑えないだろうなぁ・・・。子供達は、お父さんの言動に顔をしかめつつ諦めモード。お母さんなんて、もう達観しちゃってるような感じだしな~(笑)と思っていたら、お母さんの意外な過去が・・・。なるほど。

東京では閉塞感を感じるようなお話でしたが、舞台を西表に移すと、とたんに開放的になった。内容的には、だんだんと笑えなくなっていくんだけど、東京編よりも明るいイメージ。お母さんの重石が取れちゃったせいもあるのかなぁ(笑)
東京と西表では子供もだけど、大人達も違う。特に先生たち。隠さずきちんと子供たちに説明する西表の先生達には、好感が持てました。そんな時に届いた、東京で担任だった南先生からの手紙。思わずホロリとしちゃったよ。先生エライっ!間違いに気付いたら、子供相手でも誤魔化さず、きちんと謝罪する。ついウヤムヤにしちゃいそうになるのに・・・。こんな人になりたいものだな~と思いました。

お母さんの
「~人間として何ひとつ間違ったことはしていないんだから」
「人の物を盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない、そういうの、すべて守ってきたつもり。唯一常識から外れたことがあるとしたら、それは、世間と合わせなかったってことだけでしょう。」

そして、お父さんの
「前にも言ったが、おとうさんを見習うな。おとうさんは少し極端だからな。けれど卑怯な大人にだけはなるな。立場で生きるような大人にはなるな。」
この言葉が心に残りました。子供たちに、自信を持ってこんな言葉をかけられる親ってすごいな、と思います。人として一番大切なこと、してはいけないことをちゃんと分かっている。自分のことを客観的に見れて、我が子だからと押し付けない。あまりにも破天荒で、身近にいる人達(特に子供達)は色々と大変なことも多いだろうけど、それでも嫌いになれないのは、応援しちゃうのは、”親だから”ってことだけはなく、こういうところを感じているからなんだろうなぁ・・・。

それから、南先生の手紙も印象的でした。
「協調性も大事ですが、悪いことに協調していては意味がありません。」

全体的にうはうは笑いながら読んだんだけど、最後は涙涙・・・。ジーンとくるようなラストでした。家族の”絆”ってことを考えさせられた作品でもありました。


サウス・バウンド
ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 15:41| Comment(4) | TrackBack(3) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
両親(特にお父さん)の破天荒さに気をとられちゃったんですけど、ズシンと心に残ることをちゃんと子どもたちに伝えているんですね。
すずなさんのレビューで思い出せました♪
Posted by エビノート at 2007年10月19日 20:19
こんばんは(^^)。
お父さんのアナーキーっぷりはスゴすぎて、なんだかもう感想もへったくれもなかったんですが、お母さんまではじけちゃったところには、ホント笑いました。
子供達も、きっと自分なりに筋の通った人間に成長するんだろうなぁ、と気分よく読めました。
Posted by 水無月・R at 2007年10月19日 22:42
ありがとー!! 読んでくれて嬉しいです。
興奮のスイッチが入る感じで、最後はぶっ通しで没頭して読みました。
主人公の二郎の成長もいいんだけど、どうしても一郎さんに目が行っちゃうんだよね。
人から借りて読んだのですが、自分でも買いなおそうか迷っています。
Posted by 香桑 at 2007年10月19日 22:53
>エビノートさん
むちゃくちゃだわー;;;と思っていたお父さんの、意外な言葉にジーンときちゃったんですよねぇ^^;

>水無月・Rさん
お父さんは凄かったですね~。でも、慣れてきたのかだんだんと好感を持ってしまいました。自分の親じゃない、って安心感もあったのかもしれません^^;
高校生くらいになった二郎に会ってみたいなぁ~なんて思います。

>香桑さん
こっちこそ、おススメしてくれてありがとーっだよ!
”興奮のスイッチ”ってよく分かるっ!!私もそんな感じでした。
二郎が主人公なのに、ついつい一郎さんに目がいっちゃうよねぇ^^;しょうがないよ・・・(笑)
Posted by すずな@主 at 2007年10月20日 15:11
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サウスバウンド 〔奥田 英朗〕
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Tracked: 2007-10-19 20:12

奥田英朗『サウスバウンド』 ○
Excerpt: 元・革命闘士で、現・無政府(無国家?)主義者の父を持つ一家が、西表島へ移住。 奥田英朗『サウスバウント』の、父親の無茶苦茶さとそれについていかなくてはいけない一家にビックリ・・・であった。
Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。
Tracked: 2007-10-19 22:38

サウス・バウンド
Excerpt: 奥田英朗 2005 角川書店 こんな父親、嫌だーーーーっ。ぐうたらで、わがまま
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Tracked: 2007-10-19 23:33