2007年09月06日

死神の精度(伊坂幸太郎)

「死神」を主人公にした短編連作集。
”死”を扱うお話なんだけど、そこまで暗く救いようのなさというのは感じられなかったなぁ。人間臭さというか、そういう俗世間的なものはあまり感じず、上品で洗練されたという印象を受けました。もちろん、内容的にはモロ人間臭いんだけど、主人公が死神だからか、それらが淡々語られることで美的?なものに変わった・・・というかね。

死神の千葉の仕事は、選ばれた人間に死を与えていいのかどうか1週間調査し、「可」とするか「見送り」とするか決めるというもの。とはいっても、ほとんどは「可」となるのだが・・・。

死神ゆえに世間知らずで、その発想や言葉に笑わされる。絶妙なタイミングで挟み込まれるその言葉達。こういうところ、伊坂さんってば上手いよな~。心で喝采を送りながら読んだ。ひとつひとつのお話が独立している・・・と思わせておいて最後の章で、見事に繋がっていく。その伏線の妙。うわ。こ、これは!えーっ!?そういうことなのかぁ!と唸らされる。時間の経過とか、登場人物達の絡まり具合とか。もうお見事です。

伊坂作品に共通しているものといえば「音楽」。著者が「音楽」をどういう位置付けにしているのか、どれほど愛しているのか、色んな作品を読むたびに伝わってくる。この作品もそうだけど、「オーデュポンの祈り」もそうだった。そういうところも、私が伊坂作品に惹かれる魅力のひとつなのかもしれないなぁ。

死神の精度
ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 07:10| Comment(5) | TrackBack(5) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
上品で洗練された感じ、なるほど、わかるような気がします。なんか、泥臭くないんですよね。

 伏線の仕込み方、伊坂さんさすがですよね。
 最後には「そう来たかー!」でした。
 いつもながらですが(笑)
Posted by miyukichi at 2007年09月07日 19:27
すずなさん、こんばんは(^^)。
TB&コメント、ありがとうございました。
こちらからも、TBをお返ししますね♪

「ミュージック」を愛する死神。
人間に同情も畏怖もない、飄々と軽やかにわたっていく死神がよかったですよね!
そして、ストーリー構成の見事さと、使われている言葉の含蓄の深さ。
伊坂さんの作品は、読んでてホントに「スッゴイな~」と感心しますよね。
Posted by 水無月・R at 2007年09月07日 21:46
こんばんは!
伊坂さんの作品には音楽が登場するものが多いですよね~。
『アヒルと鴨のコインロッカー』にも音楽が印象的に使われてました♪
聴いてみたい~と思いつつ、聴いてないんですけど(^_^;)
千葉のずれた言葉、でもその中には真理かも!と思うものもあって深いなぁ~と唸ってしまったりでした。
Posted by エビノート at 2007年09月08日 00:55
こんばんは。
語り口は淡々としているのに、会話になるとおかしくなっちゃう千葉さんのギャップが笑えました。
最後の章、見事でしたね。
伊坂さんの音楽への愛、いろんな作品から伝わってきて惹かれますよね。
すずなさんの頭に、今回どんな曲が流れたのかちょっと知りたい気もします(失礼?)。
Posted by 藍色 at 2007年09月08日 01:45
>miyukichiさん
複線の張り方、ストーリー展開と、伊坂さんには唸らされることが多いですよね~。
そういうところにハマってしまってます^^;

>水無月・Rさん
素敵な本を紹介いただいてありがとうございました♪
今までイメージしていた死神と違って、飄々と淡々としていたところが良かったです。それに加えて死神から発せられる言葉の数々のとっぴさ&含蓄の深さも魅力でした。

>エビノートさん
「アヒルと~」はボブ・ディランでしたっけ?いや、ディランは「ラッシュ・ライフ」だったかな?”魅力のひとつ”と言いつつうろ覚えな私です^^;
千葉の言葉に笑いつつも大きく頷かされましたね。

>藍色さん
あの素っ頓狂な言葉に、それを発する絶妙なタイミングにすっかり千葉ファンになってしまいました(笑)
頭の中に流れ音楽ですか・・・。いや、全然失礼じゃないんですけど~。今回は印象的な特定のタイトルはなかったんで、流れなかったような気がします^^;強いて言えばバッハ?(笑)
Posted by すずな@主 at 2007年09月08日 09:42
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック

死神の精度/伊坂幸太郎 [Book]
Excerpt: 伊坂幸太郎:著 『死神の精度』  死神の精度文藝春秋このアイテムの詳細を見る  タイトルから、えっらく暗くて怖そうな、  そして堅い系統の作品を、想像していました。  それがなんと、大違い!  こん..
Weblog: miyukichin’mu*me*mo*
Tracked: 2007-09-07 19:22

『死神の精度』/伊坂幸太郎 ◎
Excerpt: 感情もなければ痛覚もない死神が唯一つ、現世で愛するものは「ミュージック」である。死神は、仕事の現場(人間界)に出ると仕事の合間を縫って、CDショップで音楽を視聴する。 死神は、寿命でない死を迎える人間..
Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。
Tracked: 2007-09-07 21:37

死神の精度〔伊坂幸太郎〕
Excerpt: ある時は恋愛小説風に、ある時はロード・ノベル風に、ある時は本格推理風に…… 様々なスタイルで語られる、死神の見た6つの人間模様。 (紀伊國屋書店HPより)
Weblog: まったり読書日記
Tracked: 2007-09-08 00:51

死神の精度、伊坂幸太郎
Excerpt: 写真は藤里一郎。表題作で、第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞。「2006年度版このミステリーがすごい!」の国内編第12位を獲得。 情報部からのわずかな情報をもとに、その時々で姿形を決められ七日..
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2007-09-08 01:46

死神の精度<伊坂幸太郎>-本:2010-31-
Excerpt: 死神の精度クチコミを見る # 出版社: 文藝春秋 (2005/6/28) # ISBN-10: 4163239804 評価:80点 5年も前の小説とは知らなかった。 しかもラジオドラマ化、映画..
Weblog: デコ親父はいつも減量中
Tracked: 2010-08-29 18:14