2007年05月31日

きつねのはなし(森見登美彦)

これは好き。
森見さん独特のクセのある文体が影を潜めていて、お陰で読みやすかったのかどうかは分からなかったんだけどね。自分でも意外に思うほど気に入っちゃいました。内容的には私好みなんだよね。だからかな。メロスよりも断然、好きですね。

短編集なんだけど、どのお話にも登場する古道具屋「芳蓮堂」によって繋がっているよう。連作集と呼んでいいのかな?

舞台は京都。”ケモノ”、竹林に囲まれた古い家屋、狐面、謎の男、行燈、などなど・・・。いかにもな設定。”京都”という土地柄にぴったりのお話ですね。魑魅魍魎が物陰から覗いている。窺っている。ひゅぅ~どろどろどろろろろぉ~~~って効果音が聞こえてきそう。現代の物語であるハズなのに、”京都”というだけで、そういう類のモノが違和感無く受け入れられる。不思議な都。普段、生活している訳ではなく、書物などから受けた”知識”だけの印象だからこそなのかな、とも思うんだけど。外国人の中には「今でも日本人はちょんまげ結って、腹切してる」って思ってる人がいる、ってのと一緒なのかな?(笑)実際に生活している人にとっては、どうなんだろう?得体の知れないじっとりとした禍々しさみたいなものを感じることもあるんだろうか・・・。

「太陽の塔」や「夜は短し歩けよ乙女」のように、うはははは。という笑いは全く無い。へぇ~森見さんって、こんなお話も書くんだねぇ、と意外でした。薄気味悪さやおどろおどろした印象ばかりのお話達。こういうの好きなんで、もっと書いて欲しいなぁ、と思います。

そして、他の作品もそうだったっけ?と思ったんだけどね。この小説って”ふりがな”が一切振ってないんだよね。だから、普段使わないような言葉や場所名が出てくると、一瞬読み方に迷ってしまう。特に名前とかね。例えば「直次郎」。普通に読めば「なおじろう」なんだろうけど、もしかすると捻って「ちょくじろう」かもしれない、とか変なことが気になってねぇ。ストーリーには全く関係ないんだけどさ(笑)だから、名前だけでも、それも一度だけでいいから、”ふりがな”を振って欲しかったなぁ、なんて思っちゃったり。

きつねのはなし
ラベル:読書 著者(ま)
posted by すずな at 07:09| Comment(6) | TrackBack(3) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
意外でしたねー。メロスの中では、「満開の桜」が「きつねのはなし」に近いと思うのです。メロスがダメだったら、これもダメかなあ?なんて思ったのですが。
森見さんの文体が苦手な人には、確かにこれが一番読みやすいと思います。私は最後、龍がきちんと琵琶湖に戻れなかったんじゃないかと、それが心配で心配で可哀想でした。
Posted by あまね at 2007年05月31日 12:17
自分でも意外(笑)

あの文体で笑いが無いメロス(短編”メロス”にはあるけど)がダメだったんで、笑いのある太陽とか乙女はOKで、笑いが無くてもあの文体じゃなかったんでOKだったのかな、と。
Posted by すずな@主 at 2007年05月31日 13:08
これが私の初・森見作品でした。
この作品に触れていたから、あの独特の文体に戸惑っても読みすすめよう~って思えたのかも。
今ではすっかりハマちゃってますけど(笑)
次はたぬきの話が読めるとのこと、どんな世界を見せてくれるのか楽しみですね♪
Posted by エビノート at 2007年09月11日 22:44
>エビノートさん
これが初森見作品っていうのもなかなかですね~。でも、最初に読んだ作品が好きだと、次で「ちょっと・・・」と思っても最後まで読んでしまいますよね。やっぱり”初対面の印象”って大事なんですね~(笑)
そうそう!次は「たぬき」でしたね~。実はちょっとドキドキで、不安と期待が半分ずつの気持ちで待っている状態なのです。好きな作品だといいなぁ・・・。
Posted by すずな@主 at 2007年09月12日 09:04
すずなさん、こんばんは(^^)。
私は「黒髪乙女」とか「有頂天な毛玉たち」とか「妄想&男汁まみれ」な方からモリミー世界に入ったので、この作品は「あれ?」って感じてしまいました。
京都という土地は、本当にディープですよねぇ~。まだまだ初心者の私は、物語の外側を右往左往するだけでした。ちょっと残念。
Posted by 水無月・R at 2008年05月18日 23:12
>水無月・Rさん
他作品とは、ちょっと雰囲気の違う作品でしたね。実は森見作品では「妄想&男汁まみれ」の次に好きな作品なのです。
でも、私も外側を右往左往してただけのような気がします^^;;;
Posted by すずな@主 at 2008年05月19日 11:14
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『きつねのはなし』/森見登美彦 ○
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