代々伝わる”ぬか床”を巡る物語。ぬか床って手入れをすればずっと使えるわけで、嫁入り道具として「ぬか床持って」って言葉もよく聞く。まぁ、私の周りではそんな言葉を聞くことはないんだけど(笑)小説とかドラマとかではよく聞く言葉だよねー。その”ぬか床”を通して、生物の連綿と永遠に続く営みを語るとは・・・やられた;;;というかお見事!と唸ってしまった。これは、日本人にしか書けないお話だなぁ。
どうして生物は「種の保存」に拘るのか。どうして生物は何事からも「種の保存」を最優先するのか。自分の遺伝子を残すことに必死になるのか。そこまでして種の保存を図ることではないのではないか。滅びる運命なら、それはそれでいいのではないか。自分の遺伝子を残すことがどうしてそんなに重要なのか。私のようなモノが生まれるというのなら、それは無い方がいいのではないか。ずっとずっと疑問に感じていました。おまけに私は、どう考えても「種の保存」という行為には参加出来そうにないし・・・。
その答えのひとつをこのお話から貰いました。この世に最初に生まれたものが味わった孤独を思う時、仲間を増やしたいという、種を残していきたいという切実な願望を理解出来るような気がします。まさに目からウロコでした。
お話の展開には付いていけない部分や、ソレがいるのか、という疑問が浮かぶものの全体として読みやすく梨木さんらしい語り口は、やっぱりこの著者は好きだなーと、そんなことを感じるお話でした。
何とも不思議な物語でした。「生命」の繁栄にはいくつもの淘汰があり、今に至っているのだけれど、まったく別の可能性が実は残っていたのだと・・・。
もちろんフィクションなのですが、それでも「孤独」を軸に別の可能性が、というのには妙にリアルな感じがしましたね。
いつか、別の生命体に人間は駆逐されるのかも知れない、なんて感傷的な思いをもってしまいました。
そうですね。不思議なお話でしたね。
ちょっと前に読んだんですが、みょーに心に残っていて、時々、あの糠床を思い出していたりします。
そして、最初の生命が感じた「孤独」というのが、すごくストンと心に落ち着いたのを覚えています。
あの沼から新たな生命体が・・・、そして人間は・・・と、つい考えてしまいますね。