2017年07月25日

ときどき旅に出るカフェ(近藤史恵)

照明会社で働く仕事一筋37歳独身の瑛子。近所で見つけた「カフェ・ルーズ」の店主はかつての同僚の葛井円で、海外で出会った美味しいメニューを提供しているという。その雰囲気に惹かれて通うようになったが・・・。

瑛子の現状や将来に対する不安に、うんうん、そうなんだよねーと共感。「是が非でも結婚したい!」という気持ちも焦りも無いけれど、病気になったら、仕事を続けられなくなってしまったら・・・という不安は頭の片隅でずっと燻っている思いなんですよね。なので、瑛子にはすっごい親近感を持ちました。

カフェの美味しそうなお料理の数々と、瑛子の元に舞い込んでくる謎。いろんな国の料理に舌鼓を打ちながら、円との会話の中から謎解きのヒントを見つけたり、円が謎解きをしたりと、料理と謎解きのコラボが楽しかった。著者が同じなので、「ビストロ・パ・マル」とちょっと重なる部分もあったけれど、主人公が客という立場だったこともあって、また違った趣でした。

それにしても、こんなカフェが近所にあったら私も通い詰めたい!珍しいメニューと居心地の良い空間、そして、店主と客の距離感。店主が旅先で出会った料理のアレコレを聞きながら異国の地へ思いを馳せたり・・・。あぁ、瑛子が羨ましいなぁと思いながら読んでいたら、なんだか、だんだんと不穏な空気が流れてきて・・・。まさか、相続問題にまで発展していくとは思わなかったけど、それまでの、どちらかというとホッコリした雰囲気から一転、ドキドキピリピリな展開に驚きつつ、どうなるの?どうなるのー?という緊張感も味わえて、楽しませてもらいました。


面白かった。続編が出るといいなぁ。



(2017.06.14 読了)





ときどき旅に出るカフェ
双葉社
近藤 史恵

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ラベル:読書 著者(か)
posted by すずな at 09:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月15日

まことの華姫(畠中恵)

江戸を舞台に、姫様人形が活躍する連作短編集。

お華は江戸両国の見世物小屋で評判の姫様人形。可憐な仕草を操り、一人二役で語るのは芸人の月草。そんなお華が”真実を語る”と評判になり・・・。

「しゃばけ」と同じ江戸を舞台にした謎解き話でしたが、主人公が姫様人形ということもあって、また違った趣がありました。まぁ、お華を主人公と言っていいのかどうか、ちょっと迷うところではあったんだけどね。1話目に登場したお夏が、お話の最後まで関わってきて、どっちかというと、お夏の方が印象的には強かったような気もします。まぁ、お華は、月草が操っているお人形ってこともあったからね。

そうそう。最初にあらすじを読んだ時には、”喋る姫様人形”ということで、「しゃばけ」のように妖が関わっているのかと思たんですが、そこは違ってました。腹話術のように人間が操るお人形で、実際にお華が自由に喋り出すってことではなかった。・・・ちょっと残念。

真実を口にすると評判になった華姫の元には真実を知りたいと願う人々が次々と訪れる。姉を殺したのは実の父かもしれないと疑う娘(お夏)、大火事で行方不明になった子供を捜し続ける夫婦、行方知れずになった義兄を探しに西国からやってきた若旦那などなど。人形が本当に話す筈がないと分かっていても、人は何かに縋りたい時がある。そんな人々が知った真実は、厳しく、辛く、切ないものが多かった。それでも、真実が明らかになったことで、それぞれが一歩を踏み出すキッカケになったのは良かったんじゃないかと思えました。

最後のお話は、お華を操る芸人、月草の過去。なんとも切なく、後味の悪さを感じさせるものでしたが、それでも、月草が両国にとどまる決心をしてくれたのは良かった。

・・・ってことは、続編があるのかな。華姫の毒舌やお夏とのやりとりが楽しかったので、楽しみに待っていよう。





(2017.06.12 読了)





まことの華姫
KADOKAWA
2016-09-28
畠中 恵

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ラベル:著者(は) 読書
posted by すずな at 15:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

やめるときも、すこやかなるときも(窪美澄)

タイトルと桜の花が綺麗な装丁。窪作品だけど、今回は趣がちょっと違うのかな?と思いながら読み初めましたが、やはり窪さんでした。胸をぎゅぅぅぅーーーっと搾られる切ないお話でした。

家具職人の壱晴と制作会社勤務の桜子。壱晴は過去のトラウマを抱え、毎年12月の数日間は声が出なくなる。桜子は困窮する実家を経済的に支えていて恋愛に縁遠い。そんな二人が友人の結婚式で出会い・・・。


壱晴の過去の出来事が衝撃的でした。声が出なくなるんだから、それはかなりの出来事だったんだろうとは思ってたんだけど、まさか目の前で・・・というのはね。それも高校生だったんですよね。予想以上に重くて切ない過去でした。家庭環境とかでも、桜子と重なる部分があったりもして、二人で歩んでいって欲しいという気持ちはあっても、そう簡単に「二人で乗り越えて欲しい」とは言えなくなってしまった。そんな訳で、もしやこれは悲しい結末なのかなとドキドキしながら読み進めました。

そういう二人の関係とは別に、家具を作る壱晴の静かな佇まいというかのかな、そんなものがページの奥からふんわりと立ち上がってきて、そういう部分も好きでした。手作り家具って、お値段的にも雰囲気的にも、一般庶民の私には手の出せない印象があって、なんか憧れます。作品に登場した椅子とかね、欲しいなぁとチラッと思うものの、それを私の部屋に置く、と考えると、いや待てよ、となってしまいます。合わない。てか、私の部屋、和室だし(笑)

壱晴と師匠の関係も良いなぁと思いました。まさか、あんな展開が待ってるとは思いもしなかったけど。

どうなるのかとドキドキしていた二人の関係でしたが、ほんのりと心が温かくなるラストに、あ~良かったなぁと泣き笑い。読了して、表紙の桜とタイトルがしみじみと胸に沁みてきました。


そうそう。この作品を読んだら、なんだかね、無性に「晴天の迷いクジラ」を再読したくなったんですよね。なんてトラップなんでしょう・・・。



(2017.06 読了)








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ラベル:読書 著者(か)
posted by すずな at 11:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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