珈琲豆と和食器の店「小蔵屋」を営む草さんに舞い込む日常の謎を描いたシリーズ5作目。
「小蔵屋」の敷地に山車蔵を移転する話が持ち上がった。以前交わした覚書を元にした話だったが、それは、小蔵屋を畳んだ後の話だった。現在の山車蔵のある土地を売ることになったからとはいえ、出来れば他の土地にお願いしたいと動き出した草たちだったが・・・。
山車蔵の移設問題を発端にして、草の母親が不仲になった鰻屋とのいきさつも絡まり、町内の過去の闇が徐々に浮かび上がっていく本書。表紙のほのぼのイラストに忘れそうになるけれど、そうだった、このシリーズはかなりビター色も効いてるんだったと思い出す。新聞やTVで騒がれたりする食品会社の隠蔽や偽装問題を彷彿させたり、拗れた人間関係を解きほぐす難しさを改めて感じたりもしました。
なんとか収まるかと思ったのに、草さんの思惑通りにはなかなか進まなくて、読んでるこっちまで青ざめてしまった。え、まだ収まらないの!?と思わず突っ込んでしまったよー。ドキドキヒヤヒヤして、生きた心地がしない、ってこういうことだよと思ったのでした。最後は、草さんの母親の形見の品も納まるところに納まってホッとしました。
草さんの暮らしぶりを読みながら、自分の将来をあれこれと想像してしまうのはいつものこと。こんな風に歳を重ねていければいいなぁと思うけれど、草さんのようにすっくと立つ強さを身に付けれらるのかは自信がない・・・。
(2017.05.09 読了)
2017年05月13日
ふたつのしるし(宮下奈都)
連作短編集。
田舎の町で目立たないようひっそりと生きる優等生の遥名(はるな)。学校に上手く馴染めず周囲に貶されてばかりの落ちこぼれの温之(はるゆき)。何度もすれ違った二人の”ハル”があの3月11日に東京で出会った・・・。
物語は小一と温之と中一の遥名から始まり、二人の30年が交互に描かれていく。どちらも学校や家庭で息苦しさや生き難さを感じているのは一緒だけれど、それを上手に隠しているのが遥名で隠せてないのが温之という感じかな。
相変わらず、淡々と綴られながら丁寧で繊細な文章に惹きこまれ、一気に読んでしまった。不器用な二人の生き様が切なく、愛おしい。二人は何度かニアミスしながら、ようやくその日を迎える。とはいえ、二人の本当の意味での”出会い”は、想像してたのとちょっと、いや、かなり違ってて「え、そういう出会いのなの!?」と、ビックリしたけどね(笑)
そして、出会いのその後。いきなり時間が飛んで、うわ、もうそこか!と、またまた驚かされた。でも、素敵な二人の関係に、ほんわか優しい気持ちになれるラストで嬉しくなりました。
(2017.05.06 読了)
田舎の町で目立たないようひっそりと生きる優等生の遥名(はるな)。学校に上手く馴染めず周囲に貶されてばかりの落ちこぼれの温之(はるゆき)。何度もすれ違った二人の”ハル”があの3月11日に東京で出会った・・・。
物語は小一と温之と中一の遥名から始まり、二人の30年が交互に描かれていく。どちらも学校や家庭で息苦しさや生き難さを感じているのは一緒だけれど、それを上手に隠しているのが遥名で隠せてないのが温之という感じかな。
相変わらず、淡々と綴られながら丁寧で繊細な文章に惹きこまれ、一気に読んでしまった。不器用な二人の生き様が切なく、愛おしい。二人は何度かニアミスしながら、ようやくその日を迎える。とはいえ、二人の本当の意味での”出会い”は、想像してたのとちょっと、いや、かなり違ってて「え、そういう出会いのなの!?」と、ビックリしたけどね(笑)
そして、出会いのその後。いきなり時間が飛んで、うわ、もうそこか!と、またまた驚かされた。でも、素敵な二人の関係に、ほんわか優しい気持ちになれるラストで嬉しくなりました。
(2017.05.06 読了)
2017年05月12日
菜の花食堂のささやかな事件簿(碧野圭)
「菜の花食堂」のオーナーである靖子先生が月に二度開いていいる料理教室。主人公は派遣社員として働きながら料理教室で助手をしている優希。集まる生徒さんに関わるささやかな謎を靖子先生が紐解いていく・・・。
前から気になっていたんですが、なかなか手が出なくって・・・。今回、ようやく手にすることができました。もっと早く読めば良かったなぁという反省は、もうお約束のようなんだけど(笑)
「菜の花食堂」というタイトルなんだけど、お店としての食堂の様子はほとんど語られず、そこで開催される料理教室での出来事がメインでした。「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」という靖子先生のポリシーが物語全体に溢れている1冊で、登場するお料理の数々が心を癒してくれるような、そんなお話でした。
一番、印象的だったのは、助手の優希のお話「ケーキに罪はない」かな。靖子先生との出会いや前の職場や元同僚とのアレコレ。読みながら気持ちがずんずんと重くなってしまったんだけど、最後の先生に一言に胸いっぱいに暖かいものが溢れていきました。凛としたその一言が、かっこ良くて惚れ惚れ。ホント素敵な人だなぁ。
・・・と、靖子先生にベタ惚れしてたのに、最後の「チョコレートの願い」には、ちょっとビックリ。靖子先生にそんな過去があったなんて。娘さんとの関係にも驚きました。でも、家族だからこそ、こじれてしまうと中々、修正できないことってあるよなぁとも思ったり。優希の後押しも頼もしく、これから菜の花食堂や料理教室がどうなっていくのか、楽しみにもなってきました。
ということで、早速、シリーズ2作目も入手済みです。読めるのはちょっと先になりそうなんだけど、今月中には読みたいなぁ。
・はちみつはささやく
・茄子は覚えている
・ケーキに罪はない
・小豆は知っている
・ゴボウは主張する
・チョコレートの願い
(2017.05.05読了)
前から気になっていたんですが、なかなか手が出なくって・・・。今回、ようやく手にすることができました。もっと早く読めば良かったなぁという反省は、もうお約束のようなんだけど(笑)
「菜の花食堂」というタイトルなんだけど、お店としての食堂の様子はほとんど語られず、そこで開催される料理教室での出来事がメインでした。「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」という靖子先生のポリシーが物語全体に溢れている1冊で、登場するお料理の数々が心を癒してくれるような、そんなお話でした。
一番、印象的だったのは、助手の優希のお話「ケーキに罪はない」かな。靖子先生との出会いや前の職場や元同僚とのアレコレ。読みながら気持ちがずんずんと重くなってしまったんだけど、最後の先生に一言に胸いっぱいに暖かいものが溢れていきました。凛としたその一言が、かっこ良くて惚れ惚れ。ホント素敵な人だなぁ。
・・・と、靖子先生にベタ惚れしてたのに、最後の「チョコレートの願い」には、ちょっとビックリ。靖子先生にそんな過去があったなんて。娘さんとの関係にも驚きました。でも、家族だからこそ、こじれてしまうと中々、修正できないことってあるよなぁとも思ったり。優希の後押しも頼もしく、これから菜の花食堂や料理教室がどうなっていくのか、楽しみにもなってきました。
ということで、早速、シリーズ2作目も入手済みです。読めるのはちょっと先になりそうなんだけど、今月中には読みたいなぁ。
・はちみつはささやく
・茄子は覚えている
・ケーキに罪はない
・小豆は知っている
・ゴボウは主張する
・チョコレートの願い
(2017.05.05読了)