2017年03月07日

望み(雫井脩介)

建築デザイナーの石川一登。妻は校正者の貴代美。高一の息子と中三の娘の二人の子供たちと東京のベッドタウンで暮らしていた。夏休み明けのある日、息子が2日経っても帰らず連絡も取れない中、息子の友人である少年が復数人によって殺害されたというニュースが流れる。行方不明になっているのは3人。死体を積んだ車から逃走したのは2人。息子は犯人なのか、それとも・・・。

読んでいる途中からタイトルが胸に迫ってきました。父親は息子が犯人であるはずがないと思うが、それは息子の死を意味し、母親は生きていて欲しいと思うが、それは息子が犯人であることを意味する。父親の「望み」と母親の「望み」は、どちらも理解できるし、どちらであっても辛いことには変わりはないんですよね。二人の心情が切々と綴られ、その思いが胸に迫まってきて息が出来ないような、そんな気持ちになりました。私ならどちらの「望み」を持つだろうか。考えても考えても答えは出なくて、「やっぱり・・・」「いや、でも・・・」と心が揺れてばかりでした。子供を持たない私でさえもこうなのだから、子供を持つ親の立場で読んだ人は、さぞや読み進めるのが辛かっただろうなぁと思います。

父と母の「望み」が違っていたことで、お互いへの不信感も生まれたり、そこに妹である娘の心情も絡まって、家族としての関係も微妙に変わってしまう。そして、身内や近所の反応も様々で、なんというかね、自分の身に置き換えたりして、なんともいえない気持ちになりました。私が、それぞれの立場だったら、どんな言動を取るのだろうか。もちろん、実際にその立場にならないと分からないんでしょうけど、深く考えるのがちょっと怖くなったりもしたのでした。

それにしても、マスコミの傍若無人振りには腹が立ちました。犯人と決まったわけでもないのに決め付けたり。読んでてムカムカしました。TVでは時折、ここに書かれている様なインタビュー映像が流れることがありますが、個人的には「そんな映像は見なくていい。」と思うことが多いです。最近では、成人している加害者の親の謝罪映像が流れたりもするんですが、それも要るのか?と疑問に思います。まぁ、あくまでも個人的な意見ですけどね。
・・・と、話がチトそれました。

途中から、結末はどちらの親の「望み」なんだろうか気になってページを繰る手が止まらなくなりました。でもね、どちらであっても辛い結末には変わりなくて、大どんでん返しで「第3の望み」にとかにならないものかと、そんな願いを持ちつつ読み進めたんですが・・・。

最後はやっぱり泣いてしまった。この家族が、この後、どうなったのか知りたいような、知りたくないような、複雑な気持ちで読了しました。



(2017.02 読了)




望み
KADOKAWA/角川書店
2016-09-05
雫井 脩介

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ラベル:読書 著者(さ)
posted by すずな at 12:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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