第7回山田風太郎賞受賞作。実際に起こった「グリコ森永事件」を題材に書かれた小説。
「グリコ森永事件」といえば、当時、子供だった私にも記憶に残っています。社長誘拐、菓子への青酸ソーダ混入と大きなニュースとなりました。あの事件をきっかけに、菓子箱がセロファンで包まれるようになったんですよね。菓子メーカーとしては、本当に大変な事件だったと思うし、よくぞ倒産という最悪の事態にならずにすんだものだと、改めて感じます。
・・・と、そんなことを思いながら、本書を読み始めたんですが、もうね、これね、面白かった!なかなかのボリュームだったんだけど、そんなこと気にならないくらい、先へ先へと急かされるように読みました。
京都でテーラーを営む曾根俊哉は、父の遺品の中からカセットテープとノートを見つけ、テープに録音されている声が自分の声で、31年前に発生した未解決事件「ギン萬事件」で恐喝に使われたものだと確信する。その頃、新聞社の文化部に籍を置く若手記者は、新聞の記念企画で「ギン萬事件」の真相を追うことになるのだが・・・。
犯人と繋がりのある子供と事件を追う記者。二人が、それぞれのとっかかりで事件を追っていく様子に、そして、二人がいつ繋がるのかとドキドキハラハラ。最初は遅々として進まなかった調査が、少しずつ少しずつパチリパチリとピースが合わさっていくように進んでいく様子に、読みながらだんだんと高揚し、興奮していきました。そこからそこに繋がるのか!と思ったり、それは、ちょっと都合良すぎじゃないの!?と突っ込みをいれたくなったり。でもね、読んでいくと、そんなご都合主義な感じも気にならなくなっていくんですよね。だって、読み進めるのがホントに、すっごく面白かったんですもん。そんなのどうでもいい、って気分になりました(笑)
ひとつひとつ丹念に取材を重ねていくことの大切さと尊さを感じられたりして良かったんだけど、加害者の子供たちのその後が辛いもので、そこは気持ちがかなり沈みました。自分も事件に関わったんだと知ったときの気持ちを思うと、本当に堪らない。やるせない。切ない。とか、そんな言葉では足りない。なんとも表しようのない重苦しい気持ちになりました。
とはいえ、本当に面白くて夢中で読みました。「グリコ森永事件」の実際の真相はどうなのか分かりませんが、実はこれが真実じゃないのか、そう思わせる説得力もありました。凄かった。
(2017.02 読了)