2017年02月27日

罪の声(塩田武士)

第7回山田風太郎賞受賞作。実際に起こった「グリコ森永事件」を題材に書かれた小説。

「グリコ森永事件」といえば、当時、子供だった私にも記憶に残っています。社長誘拐、菓子への青酸ソーダ混入と大きなニュースとなりました。あの事件をきっかけに、菓子箱がセロファンで包まれるようになったんですよね。菓子メーカーとしては、本当に大変な事件だったと思うし、よくぞ倒産という最悪の事態にならずにすんだものだと、改めて感じます。

・・・と、そんなことを思いながら、本書を読み始めたんですが、もうね、これね、面白かった!なかなかのボリュームだったんだけど、そんなこと気にならないくらい、先へ先へと急かされるように読みました。

京都でテーラーを営む曾根俊哉は、父の遺品の中からカセットテープとノートを見つけ、テープに録音されている声が自分の声で、31年前に発生した未解決事件「ギン萬事件」で恐喝に使われたものだと確信する。その頃、新聞社の文化部に籍を置く若手記者は、新聞の記念企画で「ギン萬事件」の真相を追うことになるのだが・・・。

犯人と繋がりのある子供と事件を追う記者。二人が、それぞれのとっかかりで事件を追っていく様子に、そして、二人がいつ繋がるのかとドキドキハラハラ。最初は遅々として進まなかった調査が、少しずつ少しずつパチリパチリとピースが合わさっていくように進んでいく様子に、読みながらだんだんと高揚し、興奮していきました。そこからそこに繋がるのか!と思ったり、それは、ちょっと都合良すぎじゃないの!?と突っ込みをいれたくなったり。でもね、読んでいくと、そんなご都合主義な感じも気にならなくなっていくんですよね。だって、読み進めるのがホントに、すっごく面白かったんですもん。そんなのどうでもいい、って気分になりました(笑)

ひとつひとつ丹念に取材を重ねていくことの大切さと尊さを感じられたりして良かったんだけど、加害者の子供たちのその後が辛いもので、そこは気持ちがかなり沈みました。自分も事件に関わったんだと知ったときの気持ちを思うと、本当に堪らない。やるせない。切ない。とか、そんな言葉では足りない。なんとも表しようのない重苦しい気持ちになりました。

とはいえ、本当に面白くて夢中で読みました。「グリコ森永事件」の実際の真相はどうなのか分かりませんが、実はこれが真実じゃないのか、そう思わせる説得力もありました。凄かった。


(2017.02 読了)



罪の声
講談社
塩田 武士

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ラベル:読書 著者(さ)
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2017年02月26日

居酒屋ぼったくり6(秋川滝美)

シリーズ6作目。

相変わらず、夜中に読むとキケンな本です。いや、夜中じゃなくてもキケンです。食事の後であっても、お腹がグーグー鳴ってしまいます。そして、お酒です!もう、本当にね。お酒が飲みたくなるよね。私はお酒は好きですが(笑)、晩酌はしません。飲むのは週末くらいなんだけど、この本を読んでると、平日でも、うっかりお酒に手が伸びそうになってしまって困ります。だってさ~、おつまみがさ~、冷蔵庫にある食材で、私でも作れそうなもののオンパレードなんですもーん。これはイカンよね。次から、読む日にも気を付けようと、心に誓ったのでした。
・・・えぇ、そうですよ。誘惑に負けたヒトの遠吠えですよ;;;

最初の頃は、下町の人情話がメインでしたが、この巻はさすがに恋愛要素てんこ盛りでした。もちろん、振り込め詐欺やら、本屋さんの厳しい現状やらと、そういうお話もありましたが、メインは美音と要の恋愛。それも、ヤキモキしちゃうような、ニマニマしちゃうような、そんな恋愛で・・・。悶えながら読みました(笑)公園掃除を優先しちゃう美音に、らしいなぁと思いつつ、いや、そこはさすがに恋人優先でしょ!と突っ込みを入れてしまいました。
でも、要の立場って・・・。料理人と身分違いの恋って、なんだか、髙田郁さんの時代物のお話を彷彿させられたんですが。まぁ、こっちは現代だし、そこは何とか上手くいくんじゃないのかなぁと思うんですけど。どうなんでしょうね。


鮭缶で作る鮭団子が美味しそうで、今度、鮭缶を買ってこなくちゃ!と思ったり、家で屋台とか楽しそうだなぁとか羨ましく思ったり、コンビニに行ったらお酒コーナーも覗いてみなくちゃ!と思ったり、楽しい読書になりました。
次巻はどんな美味しそうなおつまみやお酒が登場するかな。美音と要の行く末と共に気になるところです。次巻が楽しみ!



(2017.02.24 読了)




居酒屋ぼったくり〈6〉
アルファポリス
秋川 滝美

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ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 16:45| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月24日

ずうのめ人形(澤村伊智)

オカルト雑誌で働く藤間が同僚から託された都市伝説にまつわる原稿。一週間前に不審死を遂げたライターが残したもので、そこに書かれた「ずうのめ人形」という都市伝説に触れたとき怪異が始まるのだというが・・・。


ホラー系はあまり読まないんだけど、ネットの波を彷徨っていてちょくちょく目について、おまけにタイトルになんだか惹かれるものを感じて読んでみました。

・・・こ、怖かった;;;
夜、部屋で読んでいると、その本から視線が外せなくなってしまうくらい怖かった。だって、フト目をやった部屋の隅に黒い着物を着た日本人形が見えたら!と思ったら、もうさ、必死になって文字を追う以外にないよね。久々にトイレに行けなくなるかと思ったよ!いや、さすがにオトナな私は、ちゃんと行けたけどね(笑)

ホラー要素に恐怖を感じつつ、そこに登場する子供が、両親に感じる恐れや慄きも、また別の意味で怖かった。DVな父と、その父から逃げ出した母と子供たち。怖いのは父親だけかと思ったら、母親もまた精神的に危うくて。両親ともにこうだと、子供は逃げ道がないからなぁ。子供目線で語られていた部分は、「もしや・・・」という重いがあったんだけど、やっぱり予想通りだったようで。なんだかなぁと堪らない気持ちになった。そして、やがて成長した子供は、また同じように・・・。
って、何か救いはないのか!と思えてならなかった。

ひえぇ!ぎゃぁぁぁぁーっ!と、心の中で叫びながらなんとか読了したら、赤いスピンが目に入って、ひえっ!と、今度は本当に声が出てしまいました。そりゃ、この内容なら当然「赤いスピン」だよな・・・と納得しつつ、ちょっと触りたくなかったのはここだけの話;;;

読了してから知ったんですが、前作の「ぼぎわんが、来る」という作品と関連があったようですね。興味はあるけど、しばらくはいいかな。ちょっとインターバルを置かないと読めそうにない(笑)

(2017.02 読了)




ずうのめ人形
KADOKAWA/角川書店
2016-07-28
澤村伊智

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ラベル:読書 著者(さ)
posted by すずな at 12:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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